Magic a Load 2
・・リーも良く言ったな!リー、少し調子戻ってきたか?」
リチャードは首を少し傾げ考え込むとすぐに頷いた。
ディビットは二人のやり取りが気に入らなかったのかまたふてくされて岩の上に胡座をかきす膝に腕を置いていた。
暫くするとまたディビットの肩をつつくものがいてディビットの苛立ちはさらに上昇したのだった。
ディビットに小さく呟いたのはフランシスだった。ディビットは眉間にシワを寄せフランシスを暫く見つめる。フランシスも片方の透きとおったブルーの瞳で見つめ返しそしてフランシスはディビットを驚かせた。がそれも一瞬だった。
フランシスはにっこりと微笑みディビットの手をそっと触り尋ねるように言った。
「どうだい?リチャードも元に戻ったというしこの先の行動は僕と組まないか?君と僕は似ている物を持ってる気がするんだ。気がするんだじゃない同じだね。」
しかしディビットはフランシスの言葉に冷たく返す。
「は?言っている意味がさっぱり解らないんだけど?」
ディビットは途中で鼻で軽く嘲笑いまた言葉を続けた。
「俺とお前が同じ? ふざけるな。お前みたいなひ弱な者と一緒にはされたくないね。」
フランシスはディビットの言葉に全く傷つかない様子でむしろフランシスはどこか嬉しそうな表情をしていたのをクロウリー師とニックは見逃してはいなかった。むしろ二人は顔を見合わせ彼が何か企んでいると予想したと思われる。
しかし今はその事より彼らをまとめなければとクロウリー師は考えていた。
でなければ彼らは一生此処から元の世界には戻す事が不可能になる。クロウリー師はパンパンと手を叩きシン達を自分の方に注目させた。
シンとニック、ディビット以外はみんな不安げな表情でクロウリー師を見つめる。まだみんなはこの人は何故突然現れそして彼に従わなければならないのかは全く理解していなかった。みんなは彼らの事を信用しきっていないのだ。フランシスは何か知っているようだがフランシスは無口な方でその事に関しては一切触れようともしない。
シンはクロウリー師を見つめた。
「とりあえず君らにはこれから私に色々と従ってもらう事になる。これから言う事を君らにはきちんと行って欲しい。」
「つまりは?」
シンが間に挟む。
クロウリー師はにっこりと微笑みまるで本当の魔法使いのような素振りで仕切って言った。
「魔法の修業をしてもらう。」
クロウリー師の言葉に苛立ちを隠せずディビットは岩からすくっと立ち上がった。他のみんなは互に顔を見合わせた。
ディビットはズガズガと音を立てクロウリー師の前へ近寄り睨みつけた顔で強い口調で言った。
「ふざけるのも良い加減にしてくれ。お前が魔法使いならば今すぐ俺をこの場所からニューヨークへと戻してくれ。帰って仕事をしないといけないし。」
ディビットの言葉にバーバラは肩を竦める。バーバラは一瞬現実に戻された。
シンは再びディビットに近寄り肩を抱き寄せた。ディビットは気に入らないという視線をシンに向けるがシンはお構いなしな雰囲気で陽気に話す。
「あのね"デイジーちゃん"そんなピリピリしなさんなって。デイジーちゃんには少しいや、沢山、"休暇"と言うモノが必要みたいだな。なんなら俺が"癒しのキス"って言うのをしてあげようか?」
ディビットはシンが近づける顔を両手で全力で押しシンを怒鳴りつける。
「馬鹿か!お前が"癒し"とかふざけるな。そーゆうのはバーバラかナンシーにしろよな!・・・ああ、それか・・・・。いやとにかく離れろ!
その気持ち悪い顔をどうにかしろ!!」
「ひっでぇ・・・。」
ニックはへろっとした顔で二人の前に近づきおっとりとした口調で言った。
「まぁまぁ、二人とも。落ち着きなさい。とりあえず今はこの場から帰る帰らないという話ではなく、まずはサラを人間に戻さないとそれからアンディとジェイコブとも何処かて立ち会わないと・・まずそこからじゃなきゃ。みんなで協力しあわないとダメだよ。」
しかしディビットはまた講義し続けた。
「はぁ?ご冗談を・・・。"みんなで協力"?んなの今時の幼稚園生でもしねぇよ。俺は帰る。今すぐここから・・・」
「!!!!!!!!」
みんなの視線はフランシスに集まった。するとディビットはいつの間にかシンの前で俯せになって倒れ込んでいた。フランシスはふうっと気取った顔ぶりで溜息をつきクロウリー師に聞いた。
「これで良いんでしょ?」
「ああ、そうだ。それで良い。この男は現実的に生きすぎているのが"問題"だな。この先では特にシン、君とこのお小言が煩いディビットくんが重視になるというのに。」
シンは首を傾げナンシーがくれたクッキーをまた一口かじった。
シンはクロウリー師に尋ねる。
「それはどうゆう意味なんですか?"僕ら"がこの旅のメインとか言うんですか?」
クロウリー師はにっこり微笑みシンの肩をポンポンと叩く。
「ああ。先ほども言った通りに今から"元の世界"に戻って"魔法の修業"をペアでしてもらう事になる。今から君らに私が魔法をかける。それには少し時間がかかるだろうから。
みんなは私が名前を呼んだら私の前に来てくれ。」
シンもさすがにここまで本気だと調子が狂うと頭を掻き思った。この男は本当に魔法使いなのか・・・。
シンは口には出さずに居たが心の中でディビットの意見には同意していた。
突然現れた魔法使いを成人を超えているシン達が信じきるとは限らない。多分信じきっているのは数人・・・。ニックとリチャードと今はこの場には居ないがアンディがいたら奴はとっくにこの魔法使いの味方に違いないだろ。
サラは信じているかは分からない。今の彼女はそれどころではない。サラはバーバラの傍でずっと顔を俯かせたまま居る。
シンはリチャードの隣に立ちそっと聞いた。
「君ならここでどう答える?・・・。今も騙されてるかもしれない。これからも騙され行動するかもしれないこの相手に・・。リーならどう・・。」
「・・・・。俺は信じるよ・・。嫌でも・・・。シンも多分、この先のあのモノを見たら信じるしかなくなるんじゃないかな。今頃、ジェイコブとアンディもそう思っているはずだよ。・・・・。それに戻りたいなら・・やっぱみんなで協力するのが俺も良いと思うんだ・・」
その時、二人は同時に後ろに居たフランシスを見た。フランシスが気味の悪い声でくすくすと笑っている。
シンはむっとした表情で聞いた。
「何だよ・・・さらに気味悪いよ・・・。」
「・・いやぁ・・・戻れるといいよね。君らは・・・。と思っただけだよ。」
シンとリチャードは同時に顔を見合わす。そしてリチャードがシンより先に口を開いた。
「戻れるって・・・君が言ったはずだろ・・・。」
このあやふやなやり取りにシンはリチャードとフランシスの顔を交互に見る。
しかしフランシスは見透かす瞳でリチャードだけ見つめていた。
シンは二人の間に何かあるに違いないと思い間に割り込もうとしたがそれはクロウリー師の方が先だった。
クロウリー師は"やれやれ"というような表情でフランシスとリチャードの間に無理やり体を割り込ませその場で腕を組み佇んだ。
クロウリー師は困った声を出しフランシスに言う。
作品名:Magic a Load 2 作家名:悠華