人でなし?
「よう!!! おまえはまだ感染していないようだな!!!」
そこへ、バーナードが、看護婦に連れられてやって来た。
彼は少しやつれた様子だったが、明るい口調はいつも通りだったので、アンドルーズは少し安心できた。だが、バーナードは、アンドルーズの背後を見た途端、
「危ない!!!」
突然そう叫んだ……。次の瞬間、
タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ!!!
鳴り響く銃声とともに、大量の銃弾が、ラウンジを飛び始めた……。その大量の銃弾は、ラウンジにいた患者や見舞い客や医療スタッフの息の根を次々に止めていく……。警備員たちはピストルを抜いたが、反撃する余裕は無かった。
人々に向けて銃を乱射しているのは、20人ほどのNBC装備と覆面をしている兵士たちだった……。アサルトライフルやサブマシンガンを構えている。どうやら、政府に雇われた民間軍事会社(PMC)の傭兵たちらしい。金目当ての彼らは、良心の欠片も持ち合わせていないようだ……。
アンドルーズとバーナードは、コンクリート製の柱の影に隠れることに成功したが、逃げ遅れた少年は、蜂の巣になって死んだ……。肉料理好き3人家族は、口に肉を溜めこんだまま死んでいる……。銃撃は止むことなく続いており、まだ生きている人々を、躊躇することなく殺し続けている。
「政府のお偉方は、この問題をさっさと解決させたがっているようだ!」
「経済的なダメージが大きいらしいからな!」
アンドルーズとバーナードは愚痴をこぼす。
このころには、その場にいる生存者は、彼らと敵兵たちだけとなっていた。敵兵による銃撃は、次第に落ち着き始めていた。
このウィルス騒ぎ発生以来、風評被害などで、経済は後退してしまっていた。動物用とはいえ、食品から発生した問題なので当然のことだった。金儲けしかできない経済界の守銭奴どもが、政府に圧力をくわえているのだろう……。
おとなしく死ぬのはごめんだと、アンドルーズとバーナードは応戦することにした。アンドルーズは自分の拳銃を抜き、予備の小型拳銃をバーナードに手渡そうとする。
ところが、バーナードは受け取ろうとしない。
「おい、どうした?」
「……アンドルーズ、オレにはこれがあるからいらねえよ」
バーナードは、おそるおそる両手を見せた。
バーナードの両手の手首から先は、リザードマンのようになってしまっていた……。さっきまで無かったのに、人間には不釣り合いな鋭いツメが生えている……。彼は、リザードマン化していっているのだ……。