人でなし?
「バーナード!!!」
アンドルーズは、とても信じたくないという口調で叫ぶ。このままでは、戦友が完全なリザードマンになってしまうからだ。しかし、当の本人は落ち着いた口調で、
「なあ、アンドルーズ。オレはもうすぐ、人でなしのリザードマンになるだろう。しかし、オレに言わせれば、今撃ちまくっている連中や命令を下した連中やオマエの嫁さんを殺した奴も人でなしだよ」
そう言った。彼の顔は悲しそうだ。
……アンドルーズは、妊娠中だった妻を去年亡くしていた。頭のおかしな通り魔に殺されてしまったのだ……。
「……つまりだな。人でなしってのは、この世界のあちこちに元々いるってわけだ。オレもそのうちの1人になっちまうというだけさ」
その間にも、バーナードはどんどん姿を変えていく……。彼の頬には、ウロコが浮かび始めている……。
「……そんな。……おまえは人でなしなんかじゃないぞ!」
アンドルーズは、自分でも気づかないうちに泣いていた……。それを見たバーナードの顔は、悲しそうな顔から笑顔に変わる。
「オイオイ、目が潤んでいたら、うまく狙えないぜ?」
そう言うと、敵に突撃していく構えを取った。バーナードは、鋭いツメで戦うために突撃するようだ。その突撃の構えは、とても勇ましかった。
「しっかり援護してくれよ!」
バーナードはアンドルーズにそう言い残すと、敵に向かって突撃していった……。彼はすでに、ほとんどリザードマンと化している……。
敵は、そんなバーナードの出現に驚いており、彼をうまく狙えなかった。バーナードは、近くにいた敵から次々に斬殺していき、斬り裂かれた死体が、どんどんできあがっていく……。
アンドルーズは、柱の影から援護射撃をしているのだが、止まらない涙のせいで、うまく敵を狙えない……。
――数分後、その場はただ静かになった……。