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Minimum Bout Act.03

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 親や家族はなく、貧しい孤児院で育ったため早く自立をしたかった。学校に入ればわずかながら給料も出るし、衣食住には困らない。その為、9歳の頃には自ら孤児院を出て軍事学校へと入学した。セイラとは孤児院の頃に知り合ったが、彼女は孤児院の隣りのアパートに住む少女で、親はいたが兄弟はなく、いつも孤児院の子ども達と一緒になって遊んでいた。
 その頃に結婚の約束をしたのだと言い張るが、セイラより4歳年上のカッツが覚えていないのだからきっとセイラの記憶違いだと思う。
 なのに会う度にいつ結婚してくれるのかと迫るセイラに、カッツは怒りを通り越して恐怖を覚えていた。盲目的に愛される事は一方通行の場合迷惑なだけである。
「だから、ルーズって誰なの!?」
「やかましい、ルーズはルーズだ! お前何か用があって来たんじゃないのかよ!? 用がないなら帰れっ!」
 セイラが来る前から大きな声を出しっぱなしだったカッツは、軽い酸欠状態になってしまった。
 シンから手を放しドサリとソファに座ると、目をつぶって大げさにため息を吐く。
「仕事の依頼に来たのに帰れはないでしょ!? せっかく3年ぶりに会ったのに!」
「知り合いだからって安くしねーからな」
「知り合い? 許嫁でしょ!? ていうか、ルーズって誰よっ!? 女? 女よね!?」
「やっかましゃあ!!」
 カッツとセイラがお互いのほっぺたを思い切り抓るという子どものような喧嘩を始めた所で、シンはやれやれと肩をすくめて静かに階段に足を掛けた。
「とても30過ぎた大人同士の喧嘩には見えないな」
「ちょっとシン! どこに行くのよ?」
 気付かれないうちに逃げ出そうとしていたのだが、セイラに見つかってしまった。
「いや、ちょっと昼飯を買いに……」
「あらいいわね。お腹空いたわ。行きましょうカッツ」
「だあっ! 腕を絡めるな! 乳が当たってんだよっ」
「んもう、嬉しいくせにぃ」
「ーーーはあ……」
 こんな時ルーズがいてくれたら上手く落ち着かせてくれるだろうに、一体どこをほっつき歩いているのやら。
 シンを追い越してカッツの腕を引っ張りながら階段を上って行くセイラの姿をチラリと見、同じ女性でもルーズとセイラは随分と違うものだと、改めてセイラの奔放さに感心した。






 「ああ? 調査団と連絡が途絶えた?」
作品名:Minimum Bout Act.03 作家名:迫タイラ