Minimum Bout Act.03
聞き慣れた野郎の声が近くで聞こえ、その声はすぐ側までやってくると美味しそうにお菓子を食べながらカッツを見下ろした。
「ここ、は……?」
「ルーズが乗ってきた宇宙船だ。本当にお前は悪運だけはピカイチだな。こんなに早く意識を取り戻すとは、恐れ入る……何か飲むか?」
「セイ、ラは?」
その名を聞くと、シンの顔色が変わる。
「……連れ去られた。すまない」
シンの答えに目をつぶり、カッツは悔しさに歯ぎしりをする。
それでも力が入らないため、思うように噛めていない。
「迷惑、かけたな」
悔しそうな表情のシンは、ふと表情を変えると、今度は悲しそうにくるりとカッツに背を向けた。
「オレは何もしていない。礼ならルーズに言えばいい……あいつはこの4日間、ずっと寝ずにお前の看病をしていたんだからな」
4日間ーーー
そんなに眠っていたのかと、カッツは記憶をなくすまでの出来事を思い出す。
セイラは連れ去られた。そして自分も重傷を負った。
一体なにをしているのだろう。
セイラは無事なのだろうか? 泣いていないだろうか?
「カッツ、起きたの?」
部屋に入ってきたルーズが、二人の様子に眉を上げる。
「ルーズ、お前さっき休むって出て行ったばかりだろ?」
「何だか気になって眠れないから、戻ってきたのよ」
そう言いながらカッツの隣りに座って脈を取る。
「……落ち着いているみたいね」
「すまないーー」
「ミイラみたいな姿で言われてもねえ」
そう言って笑ったルーズに、カッツも気持ち微笑む。
「セイラさんを連れ去った連中の宇宙船の行き先を突き止めたわ」
「本当か?」
先に口を開いたのはシン。
頷いてルーズはテーブルに置いてあった端末を使い、エンドの地図を画面に表示した。
それを見る為に体を起こそうとするカッツを押さえつけ、叱る。
「ちょっと、怪我人は動かないで頂戴。傷が開いたらエンドに戻るのがまた遅くなるんだから」
大怪我をしたカッツを乗せたまま大気圏を抜けるのは危険な為、ルーズ達は未だ地球から出ていなかったのだ。
どうせまともに動けないし力も入らないので、カッツは諦めてシンが口に押し込んだストローから栄養ドリンクらしいジュースをチュウと飲んだ。
「ここよ」
ルーズが示したのはドルクバだった。
「トレインの所か……」
作品名:Minimum Bout Act.03 作家名:迫タイラ