Minimum Bout Act.03
だがジャングルで木が密生しているのに、そんなに遠い場所から何の障害物もなしに狙って撃てるものではない。仮に障害物のないポイントがどこかにあったとしても、たまたまカッツとシンが座っていた位置と重なるとも思えない。
そして最初の銃撃以降、セイラの悲鳴が聞こえるまで一切撃って来なかった事も腑に落ちない。
ーーいや、それを言うならば寝ているセイラを起こす事無くジャングルへ運び出すというのは、かなりの技だ。
薬を使った可能性もあるが、先ほど悲鳴が聞こえた事から考えて恐らく無い。シンが敵でセイラを人質に取るなら、気絶させて縛り、くつわをかける。
かなりの人数で動いているのだろうか?
と、そこで再び銃声が辺りに鳴り響いた。
「おいおい、今度は本気だぞ?」
シンは慎重に音の聞こえた方へと進み出す。
今度の銃声は先ほどとは比べ物にならないほどの数で、どうやら数人が同時に撃ったらしい。
「ちょっと分かりづらいが、恐らく3人か……セイラを拘束している人間がいるとして、4人ーー」
襲ってきたであろう大体の人数は分かった。そして使っている銃は全員が自動小銃のようだ。セイラが持っていた銃は自動拳銃だから、やはりセイラの仲間である政府関係者は連中にやられたのかもしれない。
もし4人以上の敵がいるなら、手首に仕込んだテグスごときでなんとか出来るだろうか。
シンの中を不安が駆け巡る。
「タタタタ……」
「ダダダダ……」
「いやあーーーっ! 放してっ!! カッツ! カッツーー!!」
「静かにしろ」
「うっ!」
銃声とセイラの叫び声に我に返り、シンは足もとに転がる石を幾つかポケットに仕舞うと木によじ上った。
少し先に視線を走らせると、迷彩服を着た男がセイラを羽交い締めにし、別の迷彩服の男が3人、銃を構えて輪を作っている。
どうやら叫んだセイラは気絶させられたらしく、男の腕の中でぐったりとしていた。
っ!?
シンは我が目を疑った。
男たちの間で血まみれになって倒れている影……
セイラが血相を変えて叫んでいたのは、カッツが撃たれたからだった。
なんて事だ、カッツが撃たれてしまったーーー
動揺している暇はない。シンは一度深呼吸をしてすぐに冷静さを取り戻すと、ポケットに入れておいた石を取り出し、セイラを拘束している男の腕目がけて思い切り投げつけた。
「うぅっ!?」
作品名:Minimum Bout Act.03 作家名:迫タイラ