Minimum Bout Act.03
後ろで肩を抑えるカッツに安堵し、シンは少しずつ建物の中へとカッツを下がらせながら辺りの様子を伺った。
次々と銃で狙って来ると思われたが、最初の数発以降撃ってこない。
「気をつけろ。結構遠くから狙ってるぞ」
「分かってる。いいから早く中に入れ。セイラが心配だ」
カッツは素早く着ていた服を破り、自分の腕を器用に縛って止血した。そして入り口から倒れるように入ると、セイラが寝ている部屋へと急いだ。
カッツもシンも殺傷能力のある武器を持っていない。相手が武器を持っているだろうことは分かっていたが、上手くやれると思っていた。シンは予め敵が襲ってきた時の為に探索に出た時に罠を仕掛けていた。その罠をこんなにも容易く抜けて来られるなど、よほどの訓練を積んだ軍人でも不可能に近い。
何かしら罠を見破るツールを持っているのかもしれない。
緊張が走る。
少しずつ身を滑らせながら、シンは神経を研ぎすませた。
もしもの場合の逃走ルートも確保しているが、まずはセイラの安否確認が先だ。
カッツの後を追い、鉄板を壁に立てかけると、シンも身を低くして素早く移動した。
「カッツ!」
部屋に入ると、シンはうずくまるカッツに駆け寄った。
「痛むのか?」
「くそっ!!」
「どうした?」
床を拳で叩き付けるカッツの先に、いるはずのセイラの姿がなかった。
急ごしらえで作った草のベッドはもぬけの殻で、毛布だけが妙に暖かそうに居座っている。
「まさか……」
「タタタンッ……」
「きゃあっ!」
銃声と女の悲鳴が遠くで響く。
「セイラっ!」
「おい、待て! カッツ!」
怪我をしているとは思えないほどのスピードで、カッツは窓から外へと飛び出した。
そのあまりの素早さに、シンはカッツを止める事が出来なかった。
「くそっ、一体どうなってるんだ!?」
あっという間にジャングルの奥へと姿を消したカッツを追いかけながら、シンは今起きたであろうほんの数分間の出来事を整理し始めた。
先ほど銃撃された時、カッツもシンも敵の気配を感じなかった。という事は、かなりの長距離から狙ってきたのだろう。
作品名:Minimum Bout Act.03 作家名:迫タイラ