Minimum Bout Act.03
「あっちだ!」
石をぶつけられた男が呻いて一瞬前のめりになった。
だがすかさず他の男たちは石が飛んで来た方向へ銃を向け、シンの姿を探し出す。
シンは木の上を軽やかに移動しながらまた石を投げる。
「ぐう!」
次々とシンの投げた石は男たちに命中し、隙を作った。
隣りの木に飛び移った所でシンは手首に仕込んだテグスを飛ばし、真下にいた男の腕に巻き付けた。
何が起こったのか分からない男は激痛に顔を歪め銃を手放し、それと同時にシンは別の木に飛び移り男を木につり上げた。
「うわあっ! 腕が、腕があっ!」
もがけばもがくほどテグスは男に腕に食い込む。
シンはテグスを切り離し、男が落ちないように固定すると、新しいテグスをグローブに仕込み茂みに身を隠す。
「くそっ!」
「タタタタタタタッ!!」
パニックになった若い男が銃を乱射すると、中年の男がすぐにそれを制する。
「やめろデニス! コーディに当たったらどうする! 落ち着け、こっちには人質がいるんだ、あっちも迂闊には手を出せない!」
「しかし隊長!」
木の陰からそっと伺うと、中年の男がナイフを取り出し、シンがいるであろう方向へ向けて声を上げた。
「大人しく出てくればこの女は助けてやろう。女がここで転がっている男と同じようになってもいいのか?」
その言葉を信じるわけにはいかない。
「お前たちの目的はなんだ? 俺達は政府の調査団の行方を探しに来ただけだ!」
シンは会話をすることで次の手を考えることにした。この状況では全員を木につり上げるか気絶させる以外に逃げる方法がない。
再び足もとの石を拾い、相手の様子を探る。
「お前たちが知る必要はない! 10秒やる。俺の気が変わらないうちに出てくれば女は助けてやろう」
出てはいけない。シンが出て行った所でセイラも撃たれて全員殺されるだけだ。
「お前たちはpiainに雇われた傭兵だろう! 地球にお前たちが来た目的に組織が関係している事は分かっている! それにお前たちが地球に入ったルートも俺達は知っている! この事をエンド政府に通報することはいつでも出来るぞ!」
この言葉に効果があったのかは分からないが、突然中年の男が部下達に指示を出すと、一人が先ほど宙づりにされた男のテグスを切り、セイラを担いであっという間に霧散してしまった。
作品名:Minimum Bout Act.03 作家名:迫タイラ