エイユウの話~狭間~
「あんたが食やいいだろうが!」
「残念!もう俺は食事を済ませていてね」
「ならちょうど減ってんじゃねぇっすか?」
「腹八分目ほど、なかなか理想的な満腹具合だね」
別に腹八分目は望ましい食事量であって、満腹具合とはなんら関係ない覚えが。俺が抜けた部分は後方の生徒によって埋められてしまい、並ぶならまた一からになってしまっていた。どうせもう一度並びなおしたところで、ノーマンに邪魔をされて終わるだろう。ここは諦めるのが妥当な線だ。俺はその線に従う。
「で、俺になんの用っすか?」
「おお、その気になったか!じゃあ行こう、すぐ行こう!」
対してゴミもついていないが、洋服をパンパンと叩く俺に、満面の笑みを向けてきた。それから人の多い食堂の中で、彼は木鏡(もっきょう)に触れる。するとそれが輝きだした。そこでふと思い出す。恐る恐る、確認を取った。
「センパイ、あの噂、百パー嘘なんすか?」
「いや、嘘も混じっちゃいるが、ほぼ事実だな」
だとしたら召喚される魔物は決まってる。嫌な予感がし、それが的中した。
食堂に重たい足音が響く。術師たちがどよめきはじめた。それもそのはず。ノーマン・ネージストの魔獣といえば。
姿を現したのはやはりそうだった。
作品名:エイユウの話~狭間~ 作家名:神田 諷