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エイユウの話~狭間~

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「手本となる奴がサボるな!」
「こいつだって一年なのにサボってんだろ!」
 立ち上がった先輩は、固まっていた俺の襟に指を突っ込んでひっぱる。首が絞まって苦しい。もう逃げるのを諦めた。余計な火の粉を浴びる必要はなかったはずだ。あの時逃げられていれば。
 しかし先輩の訴えはむなしく、ギールさんが俺の襟首から指を外してくれる。彼は更に、げほげほとむせ返る俺の背を擦ってくれた。恐れていたより優しい。が、先輩を睨むその目は閻魔よりも怖かった。
「確かに一年がサボるのもよくないが、お前が最高術師なのがなお問題だ」
 ふとそこで俺は思い出す。緑の最高術師といえば――
 思わずギギギとぎこちなく振り返る。肩で息をして少しの涙を浮かべながら、少しの恐怖を抱いた。喧嘩している二人が見えて、それでも気にせずつい尋ねる。
「もしかして、あんたがあのノーマン・ネージスト・・・?」
 すると喧嘩がピタリと止まった。あんなに怒っていたギールさんまできょとんとしている。尋ねられた先輩は、あまりにも平然とした顔で答えてくれた。
「おうよ。え?俺のこと、わかってなかったの?」
作品名:エイユウの話~狭間~ 作家名:神田 諷