エイユウの話~狭間~
「あんたの面倒も、これっきりかもねってこと」
言うやいなや、キースがバッと身を起こす。びっくりしてあたしは結構な間抜け面でぽかんと固まってしまった。ちょっと恥ずかしいけど、元に戻るほどの余裕がない。
「君以外の人が来るの?」
まさか、もう遅かったとでも言うの?もしかしてもう好かれちゃってるとか?そうしたらどうしよう!
でもそれが、あたしの無駄な懸念だったとわかる。彼は深く考えるような体勢で、ぽつりとつぶやいた。
「他の人に迫害思想がないとは限らないし・・・」
ああ、なんだ、自分のことね。そう思った。でもなぜかこの時あたしは、ホッとするというよりがっかりしていて、それが何とも気持ち悪い。
誰も傷つかないはずのあたしの牽制で、誰が一番傷ついたのか、あたしはこの時は全く気付いていなかった。
作品名:エイユウの話~狭間~ 作家名:神田 諷