エイユウの話~狭間~
今日の授業でも、やっぱりキースはいない。だからまたあたしは派遣された、でも今日はいい機会だわ。
授業に出ていないとき、なんでか解らないけど、いつも彼は中庭にいる。だから今回も中庭に行くと、やっぱり彼は優雅に眠っていた。声をかける前に、さっさとあたしに気付く。そしたらキースったら、あたしに背中を向けやがったのよ!思わずあたしはキースの頭をひっぱたいた。
「気付いてるなら、せめて起き上がるくらいしたら?」
「君の要件は一つでしょう?」
頭を押さえて、恨めしそうにこちらを見た。解ってるんだら、なおさら無視しないのが礼儀でしょうが!そうまた怒ろうとして、でも体力の無駄遣いだと思ってさっさとやめた。自分より頭のいい人と言い争うことは有意義だけど、負け試合に挑む覚悟は不要でしょ?
「そういえば、あたし、流の導師様のファンクラブをやることにしたから」
忘れる前にそれを伝えると、キースは意表を突かれたような顔をした。
「なんで僕にそれを?」
「牽制よ」なんて言えるわけもなく、思い付きをそのまま伝える。
作品名:エイユウの話~狭間~ 作家名:神田 諷