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エイユウの話~狭間~

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 結局動かせないまま、授業時間が過ぎてしまった。キースを見張るために最近昼食を共にしていない友達が、近づいてきてあたしの頭をポンポンと軽くたたく。
「大変ね、問題児の世話係も」
 突っ伏していたあたしは、その慰めを受けながら、顔も上げずについこぼした。
「あいつ、授業に出ればすごいのに・・・」
 あたしは自分より頭のいいやつは嫌いだけど、目標にするためには必要だと思ってる。彼が授業にさえ出てくれれば、あたしとあいつは対等であり、目標にできる。でも、あいつが授業に出ないままテストの点数も下げずにいる今は、確実にあたしの負けだ。ここで勝てても、「授業を受けていないから、セレナに負けた」と言われてしまえば、あたしは言い返せないからだ。あいつは言わないだろうけど、他の奴らにそう言われるのもいやだ。
 そういう意味で言ったんだけど、友達は楽しそうな声で囁いた。
「あら?ずいぶんと評価が高いじゃない?珍しい」
 ん?
 初めは彼女が何を言いたいのか分からなかった。でも、すぐに理解する。彼女はあたしに気があるんじゃないのと勘繰っているのだ。
 冗談じゃない。あたしはとっさに否定した。しかし友達は疑いを晴らさないまま「はいはい」と私のそばを離れて行った。
作品名:エイユウの話~狭間~ 作家名:神田 諷