エイユウの話~狭間~
「ごめんなさいね、解らなくって!でもあなたの説明も雑だってこと、覚えておいたほうがいいわよ」
瞬きの回数を増やした彼は、首をかしげた。十数歳の男がこれをやっても全然可愛くないんだろうけど、女の子みたいな顔の彼がしたものだから、迂闊にも少し可愛いとか思ってしまう。ちょっと悔しい。
「だって、導師だったら準導師を遣わすでしょう?それが君だったから・・・」
「導師様じゃないってわけね、よぉーく解ったわ!ありがとね!」
癖でお礼を言ってから、あたしは向きを戻した。同時に彼が笑い始める。あたしは眉をひそめてもう一度彼を見たわ。彼は口元を手で押さえながら、結構笑ってたのよ。で、憤慨してるあたしを馬鹿にしてるんだと思ったの。だから、ガツンと叱らなきゃいけないって。
「あのね、人を小バカにするのはいいけど、そんなんじゃ友達出来ないわよ」
すると彼は涙を拭きながら、あたしの叱咤に律儀に返答する。
「金糸なだけでいじめられるのに、対等に話す人は、それこそ君が初めてだよ」
さんざん笑うと、彼はすっと立ち上がった。立った瞬間に身長を越されて、あたしはまた悔しい思いをする。男と女だから当たり前とか言わないでよ。前にも言ったけど、女の子みたいな顔の男の子に抜かされるのって、意外と悔しいんだから。彼はぱんぱんと芝を掃うと、にこりと綺麗な顔で笑った。
「今日は君に免じて授業に出ようか」
それが、キースの世話係になった原因だった。
作品名:エイユウの話~狭間~ 作家名:神田 諷