エイユウの話~狭間~
「ああ、なるほどね。それで君か」
何がなるほどなのか、あたしには解らなかった。今までの怒りと合わさって膨れ上がるそれを、必死で抑える。こんな授業もまともに出ないやつの言うこと聞く必要ないわ。
あたしは彼に背を向けて教室のある方へ歩き出す。もう声はかけたし、あたしには動かせませんでしたって言って準導師様直々に連れ戻していただくほうが、ああいうやつのためにはなるのよ。
でも、と思い、あたしは踵を返した。ケルティアの元に歩いていく。彼は再び上を向いていて、腕はどかしていないが眠っているかのようだった。あたしは起こさないようにそろそろと近づく。
「同じ手は食わないよ」
彼は口を開いた。今度はあたしが驚かされる。十分に距離のある状態で驚いたので、彼にあきれられた。大きく息を吐いてから、綺麗なエメラルドの瞳があたしを初めて映しだす。
「今度は何の用?」
「さっきの、アレどういう意味?」
あたしは精一杯の勇気でもって尋ねた。何がなるほどなのか?それを聞いたつもりだった。でも、彼はきょとんとした顔をする。で、なんて言ったと思う?
「次高術師でしょ?君」
歯に衣着せぬこのセリフに、あたしは脳天が爆発するのを感じたわ。火山みたいにね。だってそうでしょう?あたしが次高術師だって相手は知ってて、しかも「次高術師なのにあれが解らないのか」って、そう言ってきたのよ!そりゃあもう耐えらんないでしょう?
作品名:エイユウの話~狭間~ 作家名:神田 諷