エイユウの話~狭間~
さっさと紋を描いた人たちが、どんどん召喚を開始した。
緑で召喚できる魔獣には、普通のとは違う「格」ってものがある。レベルって言うと簡単かしらね?
一番簡単に召喚できるのは植物型。だから初めのほうはよく見るけど、あまり契約しない人が多いわね。それに続いて魚型、両生類型、爬虫類型、鳥型、獣型、龍型とあるの。まあ、差があるとは言っても、魚類の大型のほうが両生類の小型より強いことも多いし、ごく稀に小さくても強大な力を持っているのも多い。ま、召喚の難易度の話であって、強さは個体差が多いってことね。平均値がこの順番と思ってくれてもいいと思う。それに、これから外れる存在なんて、相当稀な例なのよ。
で、まだ別格の存在がいる。それが「人型」。人型の魔物は龍型のどんな大きな魔物よりも、ずっと力が強いとされているの。だから召喚の難易度もものっ凄く高くて、あまり召喚されないの。写真や映像の記録もないし、その存在に関しては、いないのではないかなんてささやかれているくらい。でも、契約魔に聞けば、存在は確かだと口をそろえて言うらしいのよ。
だけど、あたしの目標は龍型!導師様でも扱えない人型を無理に呼び起こせば、きっと大変なことになっちゃう。龍型の魔物も大変そうだけど、生徒が出せた最高記録は小型だって言うし、中型くらいまではあたしなら扱えるに違いない!
あたしは意識を集中して、召喚の呪文を唱えた。とたんに紋が光って、光の粒があふれ出す。その粒が徐々に中央に集まって、一つの生き物が姿を現した。あたしの顔を見てきょとんとする。
それは、普通サイズの小さなトカゲだった。
作品名:エイユウの話~狭間~ 作家名:神田 諷