エイユウの話~狭間~
そして彼は暴走を始めます。学園で大量虐殺をするのです。
導師様方はその事態収拾のために、キースさんを職員室へ呼びます。なぜそれがキースさんだったのかはわかりません。たぶん、最高術師だったからでしょう。
導師様方はキースさんに何かを渡します。それが何なのかは解りません。彼はそれを見て首を振ります。そこで導師様方は、彼に何かを告げます。すると彼は、それを手に取り、口にするのです。もともと食べられる物だったのか、彼はさほど抵抗することもありませんでした。
次の瞬間、彼の体が光り始めます。彼自身はとても苦しそうにうめき、ふっと映像から消えてしまうのです。導師様方は、その様子を淡々と見ています。もちろん導師である、私のお父さんも。
最後の映像に写るのは、瓦礫と化した校舎の上に立つ、少年の姿でした。この少年がキースさんなのか、明の達人なのかはわかりません。ただはっきり解っているのは、立っているのは少年一人ということだけでした。
初め、キースさんと緑の魔女さんの姿だけのときは、私はあまり警戒していませんでした。もとより最下術師である私の予知なんて、私自身信じてはいませんでしたけど。
失恋後も私が彼から目を離せなかったのには、その理由があったからなのです。でも役者が足りない時点で、ほとんど心配はありませんでした。
けれどもとうとう、三人がそろってしまいました。最下術師である私の予知の的中率は低いはずです。だったら、今私が動けば変わるのではないかと思いました。
作品名:エイユウの話~狭間~ 作家名:神田 諷