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エイユウの話~狭間~

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 そんなある日、私が彼を見ていたときに、一人の少女が現れました。青色の制服は彼とおそろいで、同じ専攻であることを表しています。彼女は彼に話しかけ、彼をずるずると引きずっていきました。
 それを機に、少女はほぼ毎回登場するようになりました。毎回キースさんに話しかけては、彼を連れてどこかへ行くのです。そのうち、少女のほうが私より先にいるようになり、キースさんは起きていることのほうが多くなりました。そして、楽しそうに笑っていることが多くなったのです。
 私はその少女の存在が無性に気になりました。恋人なのか、友達なのか、ただのクラスメイトなのか。
 しかし、彼を見ているうちに解ってしまったのです。ああ、彼女は。

 彼の好きな人なんだ、と。

 それが解ると、なんだか彼を見ているだけだった自分がひどく惨めになりました。もし先に話しかけることができていたら、隣で私も笑っていられたのでしょうか?もし私が同じ授業を取っていたら、彼は私に目を向けていてくれたのでしょうか?
 あの色白の顔を向けて。あの輝く髪をなびかせて。あの透き通るような瞳で見つめながら。その春風のような雰囲気で。太陽のような笑顔を向けて。
 そう思えば思うほど、私は彼と彼女が話している姿を見ていられなくなりました。
作品名:エイユウの話~狭間~ 作家名:神田 諷