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エイユウの話~狭間~

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 クラスの人たちも私に関わらなくなりました。一度だけ、「導師の娘のくせに」と馬鹿にしてきた人たちがいました。私はまったく関わらずに、親にも黙って過ごしていました。しかしある日、私に向かって彼らが怒鳴ってきたのです。
「イジメを導師様にチクるなんて、卑怯だ!」
 どうやら成績が落ちたのだというのです。それが、私がチクったせいだと。いじめている人が言うには、あまりにも説得力の無い苦情でした。もともと、心の魔術は実力差が少なく、人をいじめることに時間を使っていれば、成績が落ちるのは当然過ぎる結果でした。それがたまたま導師の娘をいじめていたという事実と一致して、既成事実を作り上げてしまったようです。
 彼らは私の否定に耳も貸さず、周りはいじめられっ子の私よりも、いじめっ子の意見だけを信じました。
 そのうち、お父さんがその事実を準導師の方から聞きました。それから、私に準導師の方が護衛につくようになりました。何度お父さんに止めてくれるよう頼んでも、全然止めてくれませんでした。おかげで私は、どんどん周りから浮いてしまっていたのです。
 護衛のいなくならないことに嫌気をさした私は、準導師の方々の目を盗んで、脱走するようになりました。なるべく人通りの少ないところを通って、中庭に行くのです。
 その日も、お弁当をこっそり作って行っていました。私は授業後、お弁当を片手に中庭に移動しました。
 中庭に着いた私は、ふと見つけたのです。サラサラの髪をなびかせて、寝転がる彼の姿を。鮮やかな緑に桃色の花が咲き誇った中庭に、彼の金色の髪はとても綺麗に映えていて、色白の肌はその色彩を際立たせているようです。悠然とした様子の彼の面立ちは、強く主張するものは何も無いのにとても綺麗でした。私はつい、足を止めて見とれてしまいました。
 金色の髪は迫害思想もあることから、この学園にはきっと二人もいないでしょう。青色の制服から、彼が緑の術師だとわかりました。ごろりと寝返りを打ったので、私はあわてて近くの木陰に隠れました。どうやら完全に寝ていたようです。
 その美しさに、私はずっと彼を見ていたいとさえ思ってしまいました。
作品名:エイユウの話~狭間~ 作家名:神田 諷