エイユウの話~狭間~
「よくメガードとか解ったな」
「語学専攻でね」
「騙されんな一年」
共にいた先輩が助言をくれた。語学専攻なんてあったかと考えた俺は、口に出さずに彼に感謝する。そんな専攻、魔術学校のここにあるわけがない。
その先輩は練習試合に向かって行った。残された俺はノーマンに尋ねる。
「あんた、俺を騙したな」
すると悪びれた様子もなく、相変わらずの無表情でおちゃらけて見せた。
「いや、俺の意見が通らなかっただけだって」
「嘘八百か」
今回は流されなかった、つもりだった。しかしノーマンは困ったように眉間にしわを寄せると、俺の鼻頭にでこピンをかましてくる。鼻を押さえてにらむ俺をよそに、ノーマンが笑った。自信に満ち足りた、とも言えるが、要は人を小馬鹿にするような笑みだ。
「さっきの奴もそうだったけどな。練習試合なんて授業設計に、一介の術師の意見が反映されるわけねぇだろ?最高術師だって、導師や授業の前にはただの術師さ」
そのまま、俺の反論も聞かずにノーマンは出て行った。
それが、俺と奴が一番長く話した最後だった。
作品名:エイユウの話~狭間~ 作家名:神田 諷