エイユウの話~狭間~
「普通の明のサボり魔じゃん」
「普通じゃないだろ。いきなり出てきて次高術師と引き分けってどういうことだよ」
・・・は?ノーマンが俺にぶつけるといったのは、ごく平均的なレベルの術師だったはず。一体どういうことなんだ?そのつもりも無かったのだが、思わず俺は隠れてしまった。続けられる会話に聞き耳を立てる。
「まあそれは俺も予想してなかったな。ただの見栄かと思ってた」
「本気で見栄だと思ってたら、次高術師なんかぶつけるか?」
「一度痛い目を見る必要があると思ったんだけどな。まさか渡り合うとは・・・予想外だね」
ノーマンがくすりと笑った。それを聞いて話し相手はため息をつく。
つまりサボり癖のついている俺に灸を据えるつもりで、あの次高術師とぶつけたわけだ。とはいえ本当に改心させるつもりだったのか、それとも純粋なただの好奇心なのか、ほぼ無表情なノーマンから探ることはできそうにない。けれども相手が次高術師だったとなると、あのときの仲間への過剰なアピールや、自信家発言も納得がいった。お調子者でも、見栄っ張りでもなかったのか。
そして俺は、その次高術師と対等に渡り合ってしまったというわけだ。
相手が平均以上の実力の持ち主だとわかったとたんに足の力が抜ける。座り込むほどにはならなかったが、確実に音を立てた。
「おお、サカキ。もうそこにいたのか」
「ノーマン、彼はキサカだ」
「え?ああ、そうか。君の名はメガード読みだったね」
「変わった読み」の正体を、もう突き止めたらしい。
世界統一を果たしたアルディたちによって、文字の統一化は果たされていたが、その読みまでは統一されていない。この学園に来る人々は、大体が国のメインになる地域出身者だ。そのため、標準語とも呼べるハイル読みを使う。が、ド地方出身の俺の名は、メジャーじゃないメガード読みだ。とはいえ、ハイル読みでもサカキにはならないはずなのだが。ノーマンも地方出身ということか?
作品名:エイユウの話~狭間~ 作家名:神田 諷