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エイユウの話~狭間~

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「そこまで!」
 審判を行っていた流の準導師が、声を張り上げる。状況的に、互いが進路も退路も立たれていた。俺の水は相手の喉にまとわりつき、しかし俺が動けばこの熊が襲い掛かってくるだろう。つまり、引き分けたということだ。
「引き・・・分け・・・だと?」
 呆然とした俺は、水に送っていた魔力を止める。水はビシャッと音を立てて崩れ落ちた。目の前の熊が光って、相手の木鏡の中に戻っていく。立ちつくしていると、緑の術師が通りざまに肩を叩いていった。
「相性の差が無ければ、きっと僕の負けだったろうね。いい戦いだったと思うよ」

 退場を命じられ、ふらふらと控え室に戻っていく。階段を降りていく途中で、話し声が聞こえる。蛍光灯ランプしかなく、多少薄暗いそこでは、声で判断するしかない。しかしそれがノーマンと、彼と同年代なのだろう明の術師のようだと判断できた。どうやら彼はノーマンの小細工を知っていたらしく、あきれ返っていた。
「何考えてんだ、お前」
「特に何も?実力を知りたかっただけだよ」
「にしても荒療治だろ。っていうか、『薄紅の暗雲』って何者なんだ」
 どうやら俺の話をしているらしい。どうせ自信家だと思われているのだろう。出づらくなって、俺は足を止めた。つい息も潜めてしまう。
 俺を勘ぐる明の術師に対し、ノーマンは彼の身体チェックをしながら顔色も変えずに平然と答えた。
作品名:エイユウの話~狭間~ 作家名:神田 諷