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エイユウの話~狭間~

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「堂々とサボるなよ一年」
「一年」という言い方から、話しかけてきた相手が先輩だとわかる。そして俺が一年だとわかったということは、さっきのやつらの中に知り合いがいるということだ。が、当の俺には先輩に知り合いはおろか、顔見知りすらいないはずだった。一年だと解ったとしても、話しかけられる覚えはまったくない。
 どんな物好きが話しかけてきたのだろうかと目を開けると、そこにいたのは別専攻の、やっぱり何の関係もない人物だった。青色の制服だから、緑(りょく)の術師だと知る。そういえば次の授業が緑との練習試合だったか。そうなると、まったくの無関係ではないかと思い直した。授業開始のチャイムが奥で鳴り、響いた音が後を引く。
 チャイムに掻き消えそうな声で反抗した。
「・・・先輩もさぼってんじゃないですか」
 しかもチャイムを聞いて焦る様子を見せないほど堂々と。俺の発言を受けた先輩は、意表を突かれたようだった。年下にそんな事を言われると思わなかったんだろうと、相手の裏をかけたことにすこし得意げになる。それでも結局どうせわけのわからない説教でもしてくるのだろうと思っていたら、それは大きく外れた。先輩はふざけることなくいたって真面目な顔で俺に言う。
「いや、俺は二年だから。ノーカンで」
 今度は俺が意表を突かれた。かなり自分勝手な人のようだ。卒業資格を得るまでは、二年だろうと三年だろうと、カウント圏内だろうが。
 ふと、あることに気づく。つい腰まである長い髪のせいで、性別の判断が遅れていたのだ。驚いたせいで、つい口が滑る。
「俺って・・・あんた、男か」
 言ってからしまったと後悔する。こんなの、同年代に言われたってキレるセリフだ。俺がもし後輩なんかに言われたら、迷わず叩きのめすだろう。しかし先輩は無表情のまま、女子のような「可愛いしぐさ」をした。ショックな気持ちを表したいのだろう。全然かわいくはないけどな。
「えっ!俺って結構イケメンなのにぃ」
「麗人系のな」
 ちなみに麗人とは、男装した女性を表す。色白の肌に綺麗な茶色の長髪は、ぱっと見では女性と思うのも無理はないだろう。まつげも長くて、目の色だってむかつくぐらい透明感のある、綺麗な青色をしている。まあ、俺に言わせれば皮肉になるわけだが。
 笑いもしなかった緑の先輩は、寝転がっている俺の隣に座った。自分以上に変わった人間の登場に、俺は多少興味を示してしまう。
 人がそばにいることに慣れてないから、そわそわと落ち着かない。すると急に先輩が指差してきた。結構失礼なセンパイだ。
作品名:エイユウの話~狭間~ 作家名:神田 諷