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エイユウの話~狭間~

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「ああ、そう言ったのか・・・って、お前略しすぎだ。解るわけないだろうが」
 調べ終えたノーマンが、俺の頭を軽く小突いた。確かにそれを聞きたいなら、最初の問いかけでは省略しすぎだろう。何が言いたいのか、俺でもわからないと思う。その反面、深く追求されなかったことについ安堵した。
 金髪迫害思想というのは、学生間だけにとどまらない。俺自身金髪じゃないし、その知り合いもいないので、事実は知らない。しかし噂によると、染髪しようにもしてくれないらしい。結果、親族にやってもらうほかないのが普通だ。
 ノーマンは自慢の長髪の一部を束ねて、自分の視界に入れるように毛先を向けた。前記した内容を踏まえて、彼は口を開いた。
「引退した凄腕の染髪法師の爺さんが近所にいてな、その人にやってもらった」
「やってくれたのか?」
「ああいうのは看板が汚れるのを懸念してるのが大体だからな。その思想がない人ならやってくれるもんみたいだぞ?」
 簡単に言えば、看板が関係なければ問題ないという意味でもあるらしい。あまり詳しいことはノーマンにも解らないようだ。彼の髪の毛を染められるほどの魔力を持つ染髪法師に出会えたのは、幸運だと思った。本当に凄腕なのだろう。
 感心する俺をよそに、ノーマンは俺の背をたたく。加減というのを気にしない人間なので、俺は前につんのめった。
「ま、もともと疑っちゃいなかったけどな。持ち検問題なしだわ」
「頑張れよ」と背中をもう一度たたいて、ノーマンは控え室を出ていった。たぶん外から俺の試合を鑑賞するつもりだろう。単純なもので、俄然やる気になった。
 平均的な実力の術師というそれが事実なら、そこまで気負う必要はない。俺は自分の武器となる水が入った火筒を一本抜き出し、それをくるりと回した。遠心力で、中の水はちっとも動かない。
「さ、行くか」
 俺は闘技場への階段を上った。
作品名:エイユウの話~狭間~ 作家名:神田 諷