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エイユウの話~狭間~

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 一通りの説明を終えると、準導師は闘技場から降りていく。代わりに流の準導師たちが上がり、結界を形成する。不思議な気もするが、結界魔法は流の魔術に属するものだ。その間にもう一度頭の中でルールを確認する。覚えてなかったルールは、言われてみればそんな気がした。
 練習試合が開始してから、数時間が経過した。暇すぎて、よく我慢できるなと周囲に感心する。こんなに待たされるなら、俺はどんなに実力があったって避けたい授業だ。いや、実力がないわけじゃねぇよ?
 どうせ呼ばれないし居眠りでもし始めようと思ったとき、明の導師が声を上げた。
「第二十三試合、『薄紅の暗雲(はっこう・の・あんうん)』キサカ・ヌアンサ!」
 『薄紅の暗雲』とは、最高術師になる前の俺の称号だ。キースのように一発目で最高術師にならない限り、上り詰めたときに称号が変わるものなのである。また逆に、最高術師から下ったときも称号は変わるものらしい。あまり例のない話だが。
 続いて緑の導師がくじ引きから名前を取り出した。ノーマンの話が事実なら、あれはそれっぽく見えているだけに過ぎないのだろう。茶番を繰り広げる導師に嘆息しながら、俺はのそりと席を立つ。いつもいない人がいるせいだろう。会場がざわついていた。うるせぇな、少しは隠せよ。
「相手は緑の術師、『深緑の喚使(しんりょく・の・かんし)』コールジル・ヴァパックス」
 その名に、会場がわっと沸いた。どうやら相手は有名人らしい。仲間に向かって手を振ってふざけている様子は、お調子者のようにも見える。年齢も同じくらいだし、性別も一緒。それでも俺とは立場が間逆の存在のようだ。誰からも応援されない俺は、相手を一瞥してから控え室に向かった。
「おお、待ってたぞ」
 そう言って俺を迎えたのは、緑の術師であるノーマンだった。同じ専攻の者で調べ合うと不正が起こりやすいため、相手の専攻の術師が調べるというのがきまりだった。どうせ専攻をまたいで友情が芽生えるのが常なのだから、意味も何も無いのに。火筒(かとう)の所持数から、ポケットの中まで丹念に調べられながら、俺は手持ち無沙汰になる。
作品名:エイユウの話~狭間~ 作家名:神田 諷