エイユウの話~狭間~
「俺に、実力がないって、そう言いたいのかよ」
あまりにも弱弱しい言葉。きっと、俺みたいな言い訳がましい奴を、長々と相手にする気はなかったのだろう。こちらを見もせずにお茶を飲んで続けた。
「お前にないのは実力じゃない。説得力だ」
「説得力」という言葉を思わずくり返す。確かに自信があったわけではないが、いざ言われると落ち込む要素になる。そんな様子に、見てなかったノーマンが気付くわけもなく、更に傷口をえぐってくる。
「お前の主張は、鈍足な奴が『向かい風が強かったんだ』というくらい浅はかな発言だろ?」
喩えられたそれは、確かに浅はかというにふさわしい話だ。悔しさのあまり、俺はノーマンに啖呵を切ってしまった。
「んじゃあ、今度の明と緑の練習試合のときに、俺の実力を見せてやる!」
「じゃあ明日だな」
早くも売った喧嘩を後悔した。前回の練習試合のときもサボっていたため、その情報を持っていなかったのだ。しかし二言は男らしくない。それを破るということはプライドが許さなかった。そのため、発言の撤回もできない。
固まった俺の表情に気付いたのか、ノーマンがにやりと笑う。
「明日の相手は俺から導師様に、クラスで最も中間の相手を当ててもらうよう頼んでおこう」
もう負けられなくなった俺を見て、ギールがため息をついたのが解った。
作品名:エイユウの話~狭間~ 作家名:神田 諷