エイユウの話~狭間~
「だから、授業に出ない理由。馬鹿だから答えられないし、魔術使いもうまくない。だから逃げてんだろ。見たところお前のその性格から、誰かの強要を許容するとは思えない」
元々熱くなっていたのもある。一年前とはいえ、俺が若かったというのもある。でも、やっぱり今でも我慢できないと思う。俺は定食のお盆を勢いよく叩いて、ノーマンに掴みかかった。お盆に乗っていた空のお皿が、勢いよく宙を飛ぶ。
「俺は馬鹿じゃない!」
「馬鹿だろうと馬鹿じゃなかろうと、そういうもんだ」
掴みかかられているにも関わらず、平然と見てきた。にらみつけてる俺に対し、本当に、ただ見ているという体で。この男は表情をあまり崩さない。こんなにふざけた性格なのに、俺は真面目な顔を見ることが妙に多い。
ギールが俺をなだめてから引っぺがす。ノーマンに大丈夫かと聞いている間、俺は奴の言いたいことを考える。すると、俺の頭にポンと手を置いてきた。
「簡単だ。馬鹿じゃないなら、証明すればいい」
「簡単じゃねぇだろ」
実力を証明するのは非常に困難なことだった。今では専攻授業も一部は初心者クラスとそれ以外のクラスに分かれているが、そんなの当時は関係ない。去年までは、初心者だろうと熟練者だろうと、全ての授業、テストで一緒なのだ。
「卒業資格寸前の三年生に敵うわけねぇ」
「俺は卒業資格も取れない二年だぞ?」
はっとしてノーマンを見た。そういえばそうだっか。彼はギールを指す。まさか、という気持ちが俺の動きを止め、視線が彼の指を追うことも出来なかった。
「ギールもそうだし、お前のところのアラッキルソンもそうだぞ」
当時の最高術師が全員二年生だと、その時初めて知ったのである。卒業資格を取得できるほどの能力を持つ三年生に敵うはずもないと括っていた俺は、その事実に衝撃を受けた。言葉も出なくなる。まさか自分と同じ、卒業資格取得不可者だとは思わなかったのだ。一年二年なんて差はこの学園では関係ない。
ショックが隠せない俺は、それでもしどろもどろに言い返す。
作品名:エイユウの話~狭間~ 作家名:神田 諷