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アッシュ ラリッサ
アッシュ ラリッサ
novelistID. 46007
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流れ星のタンゴ Part.3

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 藤原は眠りにつく。アルゼンチン・タンゴの曲が彼を起こす。白いドレスを着た
 フランソワーズがフランス人のインストラクターと、男と女の親密な関係の
 瞬間を思わせるタンゴを踊りだす。藤原は踊りを止めようと彼らの方へと
 駆け出す。

 フラメンコ。嫉妬と絶望にさいなまれたひかりが赤いドレスをまとい踊り
 始める。藤原は彼女の方へ駆け寄る。

 タンゴ。フランソワーズと同じ白いドレスをまとったエリーズが小さな男の子と
 タンゴを踊る。藤原は彼らの方へ向かう。

 フラメンコ。フランソワーズとひかりが互いに向き合ってライバル心を
 見せながらフラメンコを踊る。

 タンゴ。フランソワーズが愛情をこめひかりを腕にだき、ひかりは
 フランソワーズの顔を優しく撫でる。二人は愛情豊かにタンゴを踊る。
 藤原は彼らを引き離し頭を抱えて間に入る。

 厚い霧が立ち上り、空から流れ星が雨のように降ってくる。

『第四場』

 タンゴ・バー。貞子がカウンターの後ろにいる。数組のカップルが踊っている。

女A        今晩も、貞子さんあの白いチュニックを着ているわ、
          かわいいじゃないの?
 
女B        えぇ、ほんとね。さっき、バーに入って来た時貞子さん
          急に目の前にいたから、私、びっくりしてひっくり
          かえっちゃうとこだったわよ。

女A        菊池先生、今晩いないのかしら… 残念ね… 聞いて、
          怖かったのよ!なんか身の回りで変なことがおこるのよ。

 女Bは恐ろしそうに周りを見回す。

女B        何が?ちんぴら?泥棒??火事???

女A        そんなことよりもっとずっとひどいのよ!!!見て!!!
          なぜか、年々まわりに若い人が増えてくるのよ!!!

 藤原とフランソワーズが、バーの前で会う。

フランソワーズ   藤原さん、ただいま、帰って来たわ。

藤原        おかえりなさい… 今朝は僕のかけた電話で起こしちゃった
          ね。 失礼…

フランソワーズ   あぁ、そんなことないのよ、私いま全然眠れないの。

藤原        サバ、フランソワーズさん?

フランソワーズ   No 鯖!No 鮪!No 鰯...

藤原        バーに行こう、きっと気分が良くなるよ…

 二人はバーに入る。貞子は肩を抱きながら静かにフランソワーズと話す。
 それから彼らにウィスキーと白ワインを出す。

貞子        藤原さんはあなたがいない間毎晩ここへ来ていたのよ、
          フランソワーズ!菊池と気が合うみたい。(酒瓶を見せる)

 藤原とフランソワーズはテーブルにつく。藤原はワインのグラスを
 フランソワーズの手から遠い所に置く。フランソワーズは肩にかけた
 ショールの縁飾りを無関心にいじくっている。そしてワイングラスを
 手に取ろうと手をあげる。

藤原        よかったらグラスを持ってるよ… 君の手、震えている…

フランソワーズ   全然!恥ずかしいわ… 私は大人なのに。それに病気でも
          ないし… いいえ、大丈夫、グラスを落としたりしないから!

 貞子が薄暗いダンスフロアーから彼らの方へやってくる。フランソワーズが
 驚いて飛び上がる。藤原はワイングラスを手元に寄せる。

フランソワーズ   Un fantome ! Maman ! Au secours !
          《おばけ!お母さん、助けて!》

貞子        藤原さん、パートナーを踊りに誘いなさいよ!
          椅子にしがみついてないで!今晩は、みーんな踊るのよ!
          (イノシシの唸り声のような笑い声をあげる)

フランソワーズ   あぁ、あなただったの貞子さん?!びっくりしたわ…  
          今あなたが、なんて言ったか、わからなかったわ…

貞子        藤原さんに、あなたを踊りに誘ったらって言ったのよ。

フランソワーズ   踊りに?でも藤原さんはタンゴを踊れないでしょ!?

貞子        あら… 知らないの… 一週間毎晩、藤原さんここで菊池と
          私に習っていたのよ。

藤原        (ためらいがちに)えぇ、そうなんです、サリーダに、
          オチョ、ヒロを少し習ったんだ… 一緒に踊って
          いただけますか?

 フランソワーズは注意深く自分の擦り切れたトレーナーの袖を見る。 それから
 テーブルクロスを上げテーブルの下を見る。

藤原        何を探しているの?

フランソワーズ   私の脚…

藤原        君の脚、ちゃんとあったかい?

フランソワーズ   あるけれど、驚いたわ!すっごくおかしい…

藤原        なんでおかしいの、足はちゃんとあるんでしょ???

フランソワーズ   全然分からないわ… 私の脚ったらジーンズをはいてる…
          それにこのショールどこから来たのかしら?

 フランソワーズは自分のショールをじっと見て、振って臭いをかぐ。

藤原       (心配そうに)フランソワーズ、どうしたの?サバ???

フランソワーズ   No 鯖!No 鮪!No 鰯!これ私のショールじゃない!
          変な香水の香りがする… あぁ、もしかしてアカリの
          香水かしら。たぶん彼女、私が外に出たときに私の肩に
          彼女のショールをかけてくれたのね…… 藤原さん、私…
          頭おかしくなったかも!!!私出掛ける前に何を
          着てきたかも忘れちゃったわ!

藤原        いや、君は頭おかしくなんてないよ!You’re OK !
          【大丈夫】誰にだってあることだよ!

フランソワーズ   こんな恰好じゃ、踊れないわ、ジーンズにトレーナー
          なんて。ドレスじゃなくっちゃ。

藤原        じゃぁ、いちど帰ろうよ、着替えてきたら?

フランソワーズ    待って… 多分貞子さんがドレスを持っていると思うから、
           貸してもらえないか頼んでみるわ。

 フランソワーズは、貞子に話しにバーカウンターへ向かう。それから二人は
 物置へ行く。バーの招待客が日本の歌を歌う。フランソワーズと貞子が
 戻ってくる。 フランソワーズはエレガントなドレスを身にまとっている。
 藤原は椅子から立ち上がり、フランソワーズに手を差し出すが、彼女は手を
 取らず、ついてくるように藤原の方へ手を差し伸べたままダンスフロアーへ
 とあとずさりする。ダンスペア達は興味を持って二人を見る。
 タンゴの不安気な音楽が始まる。藤原とフランソワーズは向かい合う。
 フランソワーズは、手で藤原の頭と肩の線を触れずになぞる。藤原も注意深く、