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アッシュ ラリッサ
アッシュ ラリッサ
novelistID. 46007
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流れ星のタンゴ Part.3

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フランソワーズ  (喋るのが難しい)藤原さん。 I am sorry … I cannot
          speak… 【ごめんなさい…お話できない】

 エリーズはフランソワーズのスカートにしがみつき藤原を見ないように
 母親の後ろに隠れる。

フランソワーズ   パリで… さっき亡くなった… 私の大切な人が…

藤原       亡くなった?君のタンゴの先生が??Can I help you、
         フランソワーズ ?【なにか僕にできることある?】

フランソワーズ  Yes,please.【ええ、お願い。】エリーズを喫茶店に連れて
         行ってください。お願いします… 彼女びっこをひいて…
         落ちたんです… 私は、急いで旅行会社に行って出発の日を
         変えてもらわないと… (フランス語でエリーズに話しかける)
         Toi,ma cherie,tu restes avec Fujiwaraーsan. 
         Il est tres gentil. T’as compris ?(藤原さんと一緒に
         いなさい。とても親切な方だから、わかった?)

エリーズ     D’accord,maman. Reviens vite ! J’ai peur !
         (わかった、ママ。怖いから早く帰ってきてね!)
         (泣きそうに顔をゆがめるが、泣かない)

 フランソワーズは去る。藤原はエリーズの手を取る。エリーズはまたぬいぐるみ
 を落とす。

藤原        エリーズちゃん、日本語喋れる?

エリーズ      えぇ、でもあんまり上手じゃない。子豚さんがちょっと
          教えてくれたの。

藤原        子豚さん?あぁ、窪田さん!それとこのにわとりの
          ぬいぐるみ、何て名前?

エリーズ      にわとりでもひよこでもなくて、ひよこのぼうやよ。
          名前はふもふも。子豚さんがくれたんだ。

藤原        で、子豚さんは今どこにいるの?

エリーズ      出かけてるの。私、一人でアパートにいるの怖いんだ。
         (すすり泣きをする)

藤原        なんで一人でいるのが怖いの?

エリーズ      だって私のおばあちゃんが、死んで、魂がお空に行く前、
          私とママのところにさようならを言いに来たの… それで、
          私怖くなっちゃった。

藤原       (安心した様子で)そうなんだ、君のおばあちゃんだったん
          だね? 僕はてっきり君のお母さんがパリで一緒にタンゴを
          踊っていた、タンゴの先生かと…じゃ、先生は亡くなって
          いないのか…… 残念だったね…

 二人は角の喫茶店に入る。エリーズはむっつりとしてテーブルにつき、
 ぬいぐるみに鼻を隠す。藤原は、コーヒーと生オレンジジュースと板チョコを
 頼む。

藤原        気をつけて、青いジーンズにジュースをこぼさないようにね。

エリーズ      わかった!(ジーンズにオレンジジュースのシミがつく)

藤原        (グラスをつかんで)僕が君のグラス持ってるから、君は
          赤ちゃんみたいにちょっとずつ飲んで、いい?

エリーズ      大丈夫、大丈夫、藤原さん!私赤ちゃんじゃないってば!
          シミなんかつけないもん。

藤原        昨日、君のママがタンゴを踊っているのを見たよ!
          君も踊れるの?

エリーズ      うん、少しね。ママと一緒にタンゴのレッスンに行くんだ。

藤原        へぇ、あの、かっこいい先生がいるって言うパリの
          スタジオで?

エリーズ      ううん、東京で。私もニ回か三回菊池先生と踊ったよ。

藤原        それで、パリでは君たちタンゴを踊った?

エリーズ      ママレッスンをやめちゃったんだ… 去年だったと思う。

藤原        (安心して)へぇ!へぇ!それはいい!

 エリーズはじっと藤原の目を見たまま、また、鼻をぬいぐるみで隠す。

藤原        エリーズちゃん、実はね、僕重大な秘密があるんだ…

エリーズ      (元気を取り戻して)どんな?

藤原        はは!君くらいの年頃の女の子は重大な秘密が好きだな!
          樹里って僕の娘なんだけど、君の年頃のころは、あの子も
          秘密が大好きだったよ!秘密を教えろって?僕は誰にも
          話さないよ!

エリーズ      私も、誰にも話さないから!約束する!

藤原        仔猫のノラちゃんってのうちに居るんだ。仔猫の中で一番
          いいこなんだよ!考えてみて、僕その仔猫を腕に抱いて
          寝ているんだ!君がふもふもと一緒に寝るみたいにね。

エリーズ      (がっかりして)へぇ、そう…

藤原        僕の秘密、あんまりおもしろくなかった?

エリーズ      わかんない… 仔猫飼ってるってことがなんで重大な秘密
          になるの?

藤原        あぁ、そうだね!君みたいな小さな女の子だったら
          何にもびっくりすることじゃないんだけど、でも僕みたいな
          真面目に大企業で働いているおじさん、人生のいろんな
          試練… 「試練」って言葉知ってる?(エリーズは首を横に
          振る)試練ってのは学校のテストみたいなもんだよ、
          人生での困難… ね、だから僕みたいなもうすぐ五十歳に
          なろうとしているおじさんがね、仔猫ちゃんを腕に抱いて
          寝るなんてことは、もうすっごいすっごい重大な秘密
          なんだよ!僕はみんなにこのことを隠しているんだ、
          特に同僚… つまり一緒に働いている人たちにはね。

エリーズ      そっか!わかった… 私のおばあちゃん死んじゃったから…
          だからママと私も今とっても大きな試練をうけているんだ、
          でしょ?

 藤原とエリーズは長い間見つめあっている。”I dare not tell you You are
  beautiful ”のメロディーが聞こえる。

藤原        君はまるで君のお母さんのフランソワーズみたいに僕の
          ことを見るね… 君はおんなじ目をしているよ。君の眼の
          中に悲しみと、さみしさが見える。わかる?

エリーズ      悲しみってなぁに?