火付け役は誰だ!
願いがかなう、ね。
「…事の真偽はさておき、バトルロワイヤルって四六時中やってる訳じゃないよな?俺学生だぞ?」
「あ、大丈夫、大抵の戦闘は夜だから。」
「…俺に寝るなと?」
「10時まで、それなら大丈夫?」
「まぁそれなら。」
「…なら大丈夫!」
夜襲はないのか?と思うが確かに夜襲なんかしてもポコポコパンチはポコポコパンチ、明らかに寝てても起きてても意味が無い気がしなくもない。
「という訳でそんなこんなでもう十時過ぎてるので寝て大丈夫!」
「…いや、寝るつもりだが。」
「因みに私の布団はマスターと一緒で結構で…ぎゃっ!チャチャチャチャッカマンはしまってお願い!」
「寝言は寝てから言うもんだ。」
内心冷や汗とかそのレベルではないのだが、何を言うかびっくりすんだろ!
「チャッカマンそんな風にくるくる回しながら言われると私の怖いヤバい辛いの三拍子揃っちゃうので止めて!」
「戦いて涙目でプルプル首を振っても俺の布団から退かないんだな…それとマスターじゃなくて本名火口星彦はだから。」
「じゃあ彦!私だって女の子だから布団で寝たい!ここもう私の領土!」
とまぁ俺のベットが妖精さんに不法占拠。
明らかに俺がそう答えられたら何も出来ないことを見越しての応答、この妖精様、やっぱりちょっと老獪らしい。
「でもお前女の子とはいえもう神話の頃から生きてるんだろ?もうとっくに年増…」
「何か言いました?マスター?」
目の前には銀の切っ先。
「お前いつの間にナイフ出した…」
「そこはスルーして下さいね?」
敬語が丁寧になったのが余計に怒りを感じさせる、このままじゃ死ぬと判断、土下座モード移行!
「彦が分かれば大丈夫、まだ私だって高校生ですよー。」
「それは人間換算で?妖精換算で?あ、すいません黙ります。」
今日の教訓としては妖精はむやみに刺激するとキレるって事だ、それもかなりヤバい感じに。
≡≡火付け役は誰だ!≡≡
そんな会話が騒がしく響く部屋の前で二人の少女が聞き耳を立てる。
「本当にここなの?瑞(みず)、間違えて入ったらかなり恥ずかしいけど。というかなんの会話してるんだか。」
制服を着た方が思わずため息をつく。
女子としても背は小さく小柄、茶色がかった長い髪はまとめて肩から前に流している。
「大丈夫…夜襲なんてまともな妖精もバディも考えないから…やっているのは媛佳(ひめか)位…ひゃ!」
余計な事を言ってしまった制服女子と同じ位の身長の妖精にバディから何かのスプレーを吹き掛けられている。
こちらの髪型は耳が出るか出ないかのショートカット、顔つきはインドア型だ。
「私だって夜襲なんて趣味じゃないけど願いが叶うためなら、卑怯もらっきょうもあるものか!相手が油断してる夜、しかも相手の力は火なのだからこの小型消火器(バラ売り単価1980円)で対抗すれば、無問題ね。」
「…まったく、どこから消火器が…」
「細かい事はいいのいいのー、じゃあやるわよ、せーのでドアをこじ開けて、瑞!」
「…了解。」
「せーの!!!」
ガチャ。
「どちら様?」
「…え?」
こじ開けようとしたドアが普通に開かれた。
無論そこにいるのは火口星彦と穂子。
ドアの前には今ちょうど体当たりしようとしていた覆水媛佳(ふくすいひめか)と妖精、瑞。
つまりこの状態がなんだが、覆水には理解出来た。
要は
「出落ちーーーッ!!!!」
「いきなり何が何の誰が!!??」
「彦ー、この人お知り合い?」
「…こんな事だろうと思った。」
華々しく戦闘開始などなるわけがなかった。
三番、幕引き