火付け役は誰だ!
何とか学校が終わり、俺は部活にも入っていないので普通に帰るのだが
「遅い…何故来ないんだ彦…」
ナニヤラ校門ノホウカラ唸り声ガ聞コエルノデスガー
恐る恐る校門から外を伺う。
穂子だ、やっぱり。
…いや、落ち着け。
俺は昼に穂子に帰るように言ったし寮までは遠くない、その上穂子はお金も持ってきていた、俺が怒られたりポコポコパンチ(物理)をやられる心配は無いはず。
そうは分かっていてもやはり怖いものは怖い、妖精とは気まぐれで有名なのだから。
「…もしもし穂子サン?」
「…遅い。」
いや、だから何故ここにいるんだよ。
「帰り道が分からなかったからずっと待ってたの!」
「えぇ!?だって…ここまで自力で来たんだろ?」
「あの水のバディと鬼ごっ…戦いながら来たから道を覚えてなかった!」
「その発想は無かった。」
なんかこいつら妖精らしい理由にどこか安心する。
「電話でもすれば良かったんだろうけど、一回料理学校に通ってる最中のヘスティア様に電話したら後で怒られたから止めてるんだよ。」
「いやだから神様何してんだよ本当。」
穂子はきょとんとしているがこちらとしてはそんな身近に神様がいては驚く以前に戦くだけだ。
というより竈の神様が料理て…超火力でフランベでもするのだろうか。
…一瞬面白そうだと思ったが色んな意味でやっぱり怖い。
「でもそれを言ったら私だって神様と同じような扱いだよ?死なないし。」
「いや、お前には神様らしさがまったくもって無いから大丈夫。」
なにおうといきり立つ穂子をなだめ、家に歩き出す。
穂子も後ろからとことこついてくる。
…こんな状態にも慣れたと言えば慣れたのだろうが、認めるのは何か分からないが癪だ、何も言わないでおこう。
「?彦しかめっ面してどうしたの?」
「いや、何でもない。それにしても今までずっとあそこで待ってたのか?」
明らかに何もない校門を振り返りながら言う。
「ううん、さっきまでファミレスとか転々としてたよ。」
「…ちょっと待てお前人の金で」
「大丈夫大丈夫、一店一品とドリンクバーしか頼んでないから!」
「どこが大丈夫なんだよ止めて俺の預金はもうゼロよ!?」
「そんな事を言っても私の胃の中身ももうゼロよ!?」
「いやそれはおかしい!絶対おかしいというか女の子は少食という俺の幻想を殺さないでお願い!」
こんな感じで家に向かって平和に向かっていたものの
「ん、どうした?」
突然穂子の歩みが止まった。
その視線の先には
服。
俺には女子の服は皆目見当がつかないがそれでも(うわぁ高そう)と思ってしまう位の綺麗な服。
そして今穂子はどこにでも売っているような安いフリーサイズの服を着ている。
いや、確かに穂子が可愛くないと言えば嘘になるし着たら似合うだろうが
「………」
「………」
…捨てられた子犬のような目でこっちを見ないでもらえるかな、関係の無い罪悪感が湧くだろう。
「…買わんぞ。」
「いや待って下さいお代官さまあれとは言いませんからせめてもうちょっと女の子らしい服を買わせてーーッ!」
「ええい放せ放さんか!もう今月の家計は食費で大出血だ!貴様の服など買っている余裕は無いーーッ!」
店の前でちょっとした時代劇を繰り広げてる暇なんて無い、こちらはさっさと帰りたいのだ。
というより実際俺の預金口座が楽しい事になっていそうなこの状態で実際服を買うのは辛い。
「じゃあせめて一着!」
「元々複数買うつもりだったのかよ!」
「当然!」
「威張るなッ!」
横を向いて膨れる穂子。
…もうここまで意固地なら買ってしまった方が手っ取り早い気もする。
ただ、買ってしまっただけではしつけ(?)にならないので
「…買っていい」
「本当!?じゃあ早速」
「待て話を聞け。条件がある。」
店にダッシュしていこうとする穂子の襟首を掴む。
「首が絞まる絞まります…条件?」
「…買っていいのはお前の実力と同じ位の値段の物だけだ。良いもの買いたかったらお前の実力がそれに見合うと俺に判断させなさい。」
「分かったー了解イエッサー!」
とりあえずあまり高級な物を買わせずバトルロワイヤルに勝っていくほどにちゃんと段階を少しずつ上げて買っていくようにすれば破産は免れるだろう。
それにそういう別の目的があればあのバトルロワイヤルでももう少しやる気が出るだろう。
実際自分達のトラウマ克服の為とか言いながら妖精はやる気ほぼナッシングだった。
むしろバディを組む人間達の方が積極的だ、願いが3つ叶うのだから。
俺もそれに釣られて、が一部あるのは否定しない。
でもそれより妖精達のトラウマを克服させてやりたいと思ったのもあるのだが。
と、ここまでは真面目に、ともすれば穂子の為を考えていたのだが
「店員さーん!あのウィンドウにあった服ってどこにありますか?」
ウィンドウにあった服。
この一言で思考回路が切り替わった。
あんな物を買ったら着実に破産だ。
「ふ、ふふふ、いや落ち着けきっと聞き間違」
「そうあのさらさらして高そうな奴です!」
…
………………
そして穂子はもうレジに向かっている。
嗚呼もう手遅れ事既に遅し。
それが分かっていながら穂子の姿を見て思う。
あのヤロウ明日は少なくとも絶食だ。