火付け役は誰だ!
その頃そのバディである妖精の穂子は獲物を探す類人猿のような様子になっていた。
具体的に言うと姿勢が。
ぐんにゃりしている、明らかに夏の暑さにやられている。
「暑いよ…暑すぎるよ…ギリシャの時代の炉もこんなには暑くなかったよ…」
適当な事を言いながら町をぶらつく妖精。
平日なのであまり人通りも無く、歩いているのはネクタイにスーツの会社員が少し位なものである。
「そういや彦に『バトルロワイヤルの終わり方』、言ってなかったっけ…」
さらりと何か重要な事を言いながら穂子は歩く、飯を探して。
荒れ果てたキッチン、爆発したフライパン、何故か使われなかった電子レンジをさておいて!
「うぅ暑いしお腹空いたしどこかで休みたい…アイスでも食べたい…」
「…火の妖精が暑いのを嫌がるのはいかがなものか…」
ふと後ろから声がした。
そしてこの声は穂子にとって聞き覚えがある声だった。
「あ!昨日のいけすかない睡眠妨害魔のバディ!」
「…本名覚えてなかったでしょ。」
「バレた?」
ゆっくりと穂子が振り返ると同じように、表情はクールフェイスながらも汗が凄い瑞。
「『勝負』、する?私はちょっと勘弁してほしいんだけどねー。それに」
「…同感、私もこの暑さの中で動いて倒れたくはない。…その上」
『『…バディから戦うなって言われてるし。』から。』
同じような理由だったのが分かり、二人して笑う。
無論火口と覆水からしたら余計な戦いをするなというより問題を起こすなという意味の方が強いが。
しかもそれは残念ながら破られている、穂子はキッチンを半壊させているし、穂子は知らなかったが、瑞は部屋の『中』で打ち水を敢行し、部屋が水浸しになってしまっているので緊急避難中なのだった。
因みに双方、敷金バッチリ取られます。
そんなバディが知ったら泣いてしまいそうな事を仕出かしている気ままな妖精達は二人でどこかに向かって歩き始めた。
奇しくも二人のバディが共通して通う高校に向かって。
六番、幕引き