まだらの菓子
「何を?」
「この本棚退かすんだよ。」
まさにしぶしぶといった顔でのそのそほふく前進してくる綾原。
「…まさか『本棚の裏に通風口がっ!衝撃の真実!』…とかで済まさないでしょうね?」
「文句は本棚退けた後にこのトリック考えた姉に言え。」
本棚をズルズルと引きずり、壁側に一人分のスペースを作る。
よし、後は本棚の両脇を綾原と俺で抱えて動かすだけだ。
…でもだがしかし現実は甘くない。
「…重い。」
「不機嫌そうに言うな綾原、俺も重い。」
「…商店街のケーキ三個に増量。」
「…お前の体重も比例して増量しそうだから一個にしとけ。」
途端綾原がこっちを睨んでくるが今は本棚運び中、両手はふさがっている。
その事に感謝しつつ話を続ける。
「そもそもなんで功介は通風口があるかもしれないなんて?」
「ああ、俺の扉は右ノブ内開き扉だからだよ。」
………
「…意味が分からないんだけど?」
「綾原、俺の部屋は窓とドアがあるな。」
「見れば分かるんだけど。」
「ドアは右ノブ内開きだよな。」
「うん。」
「この配置だと窓を開けてドアも開けてるとどうなる?」
「?窓から風が入ってきてドアを通って廊下に抜ける?」
「いや、その途中でだ。」
「…まさか」
気づいたようだ、一気に結論まで持っていく。
「『風でドアが閉まってしまう』んだよな、当然そんな自動ドア機能はいらないしドアが勢いよく閉まったら音もうるさい。ならどうするか、ドアをストッパーで固定する、または」
「通風口等でドアに向かう風を邪魔してやる、ってことだ。十分あり得る事だろ?」
綾原はちょっと考えたが頭を振った。
しかし俺の意見の否定ではなかったようで言葉を続ける。
「まずは一旦本棚を退かす、そこから。」
賛成、まずはこのくそ重いのを退かしてからだ。
それにしても重い、ケーキでも食って太ったか?
あ、綾原お前の事を言ったんじゃない、本棚のことだだから両手を離すのは本当に止めて痛アッ。
**まだらの菓子**
結果から言おう、物の見事に外れ。
通風口はあったものの格子がはめてあり、そう簡単には外れない。
しかも明らかに小さい、流石に奇術師のごとき姉もここは通れまい。
ついガックリと肩を落としてしまう。
しかし奴の反応は違った、というか真反対だった。
「分かった!!!分かった分かった分かった分かった!!!!!分かった!!!!!!!」
…ハイ!?
**Ⅲ自己採点、終わり**