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瀬間野信平
瀬間野信平
novelistID. 45975
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まだらの菓子

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Ⅲ自己採点



情報、情報ねぇ。

「基本的にはさっき言った通りだ、犯人はネズミが引いてったか姉が食ったか。」
「まわりくどいんだけど?」
「まぁ要はあのバカ姉の仕業だろ、これは決めていいのか?」
「まだ、ネズミが引いていった可能性もあるのだから。」
「…左様で。」

相変わらず腹這いの綾原だが顔つきはいたく真面目…に見える。

「話変わるんだけど…」
「変えるなよ、解いてる最中だろ。」
「功介の部屋は危ない構造だな。」

真顔で言われた。

何が危ないのやらと部屋の中を見渡すがこれといって危ないものはない。

あるとすれば机の上にうず高く積んだお菓子の山が崩れるとか。

「何が危ないんだ、床に画ビョウなんか落ちてない。」
「…画ビョウが落ちてるような場所を私は部屋と認めない。」

少々ショックを受けた顔をしているが男子にとって部屋内の少々の危険物は当たり前なのだ、落下物が画ビョウかどうかはともかく。

「画ビョウなどではないんだけど?」
「じゃあ何がだよ、…言っておくが部屋の一部に俺は含まれないし、第一俺は危なくないからな。」
「…先を越された。」
「だろうと思った。」
「いや、それだけではないんだけど?」

腹這いから仰向けになり綾原は指を指す。

「それ。」
「…ベッド?」

俺のベッドは下が机で上がベッドの二段式。

一段のものと比べて高さは高いがまさかこの受験生になってまで綾原も俺がここからは落ちるとは思っていまい、なら危険とはなんなのか。

「そう。正確にはこれの近くにベッドがあるのがあぶないんだけど?」

次に指差すのはベッドの向かいの本棚、大して本は入っていないが。

「こんな出入口の近くに本棚など次の地震で自殺する気かと思うんだけど?」

あぁ、そういう事か。

確かにこの本棚の配置は倒れてきたらドアをふさぐ位置だしベッドにも上の部分が激突したら怪我ではすまないだろう。

しかしながらこれは俺のせいではないのだ。

「俺が好き好んでこんな家具の配置にすると思うか?」
「しかねない。」
「即答するな、しねぇよ。これはあのバカ姉のせいだ。」
「というと?」
「一回俺の部屋に姉が入り込んでな。」
「…姉を害虫扱いしてるんだけど?」

気にせず進める。

「なんか勝手に俺の菓子つまみ食いしてたら本棚の下にキャラメルが一個落ちちゃったから取るために動かした、と、ほざきのたまいおって無理矢理姉が移動した結果がこちら。」

つまり俺のせいではないのだ、うむ。

それよりもさっきから気になっていたが

「俺の部屋の本棚とお菓子盗難は関係ないんじゃないか?」
「探偵ホームズに口を出さないでくれたまえワトソン君。」
「いつからお前はあの精力的な探偵を名乗るようになった、まずはパジャマ脱いでから言え。」
「功介セクハラ発言ーうわーそろそろハラスメントーぴぴー」
「…まともに推理する気はあるか?脳内花畑探偵。というかそろそろキレるぞ。」
「うるさいマゾ!!!」
「怠慢に非難される覚えはない。」


**まだらの菓子**


そんなこんなで三十分が経過。

一応やっとうんうん唸り始めた綾原のためにお茶を入れに下に降りる。

お茶を入れる為と俺も情報を整理したいと思ったから下に降りてきたのは良いもののある情報が少なすぎる。

俺の部屋と姉の部屋は長方形が2つ並んだ形をしている。

入り口は2つ、それぞれの部屋の間には壁と壁の中をくり貫いたクローゼットがある。

要するに部屋と部屋を通る道は入り口から入り入り口から出る、しかない。

しかしその入り口は俺がいないときはセンサーを配置してあるし、いるときは…

…まぁ厳重に警戒していた。

これでは不可能犯罪だ、しかし絶対に穴があるはずだ。

そう、『穴』が。

俺も綾原を呼ぶ前にいくつか推論を立てたがどれも入り口を通るものだった。

ならば、入り口以外の抜け道があると考えた方がよい。

例えば壁でもクローゼットの所は壁より薄い。

その薄い部分をくり貫き、通れるようにしておいた、とか。

窓を伝って侵入した、とか。

しかしながら俺の家にはベランダが無い、菓子を持ちながら移動するにはあまりにもリスキーだし道路からも丸見えだ。

クローゼットは一応全部そのような痕跡が無いか確かめたし大丈夫だろう。

他には…残念ながら俺には思い浮かばない、一旦綾原の所に戻るとしよう。


…おっと紅茶を忘れてはいかんいかん。


**まだらの菓子**


戻ったら何やら綾原が腹這いで横たわっていた。

「…寝るんじゃない。」
「…う………ん…む…寝てなど…ふぁ、いないのだけど?」
「涎の跡が口についてる時点で説得する気無いだろ。」
「仮眠、仮眠。」
「…寝てんじゃねぇか、床の涎、後で拭いとけよ。」

ため息と共に紅茶を目の前に差し出す。

綾原の隣に座り込みながら一応無駄と知りながら聞いておく。

「何か思い付いたか?」
「んん…案外難しくて。」

…難し過ぎて寝たのか。

「まぁ良い、一旦お茶にしよう。」

紅茶を未だにうつ伏せの綾原の前に置き、一緒にフルーツケーキを置いておく。

「フルーツケーキも食うだろ?」
「…食べる。」

むくりと起き上がりモソモソと冬眠明けの熊のような目のまま食べる綾原。

半分位まで食べた所で綾原がポツリと聞いてきた。

「…功介、この事件で一番難しいのは何だと思ってる?」

聞かれていることを理解してから下で自分なりにまとめた事を伝えてみる、一言で。

「侵入経路。」
「Yes、当たり、正解。」

綾原は難しい顔をしたままフルーツケーキを一口かじり続ける。

「犯人はこの家の人間以外には考えにくいし動機も今はあまり問題ではない。これが難しくなっている理由は一つだけ、侵入経路。」
「出入りするやり方は普通ならドアからだけだしドアから入っても俺がSECOMで見張ってる。実際密室なんだよな。」
「この中にドアを通らず入ってクッキーの箱の中身を奪い去り、ドアを通らずに戻る、その方法が分かれば良いんだけど?」
「ドア以外だと、窓から外に落ちるか、壁に突貫工事しておくぐらいだぞ。」
「それ以外にも天井を伝うとか下から侵入するとか考えたけど?」
「上からも下からも用意の割りに得るものが少なすぎる、しかもここは二階だから下からは考えられん。」

………うーん、どうも解けない詰め将棋状態になってしまった。

「…にしても壁に穴、ね。」

自分の考えながら少々考える。

「それがどうかした?」
「いや、この部屋に通風口でもあれば新しく壁に穴を空ける必要なんか無いなと思って。」
「あったとしたらの話、でも功介の部屋には無いんでしょ?」
「無いとは限らない。」
「それはそうなんだけど…。」
「じゃ一旦確かめてみるか。」

あぜんとした表情の綾原をさておき壁に耳をつける。

五分後、

「…綾原。」
「…壁の問診は終わった?脈は正常?」
「ふざけてるんじゃない、というか壁に問診も何もあるかって。」
「壁に耳付けて探し回るなんて何世紀前の探索法か疑うんだけど?」
「壁に耳ありなんとやらってやつだ、それより手伝ってくれ。」

見当違いな適当な理由を述べておき、本題に入る。
作品名:まだらの菓子 作家名:瀬間野信平