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ジャッカル21

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目をつけておいたトヨタレンタリースの事務所まで戻った。四駆を借りると、しばらく走って大型量販店の駐車場に入った。リュックから工具箱を取り出し、カーナビの枠をとり除いた。ロックをはずして指で可変コンデンサーをいじって周波数を400メガヘルツ以上にした。カーロケイターシステムを傍受するためだ。県警の受信センターに送る白バイ等の信号が、十五秒間隔で入ってきた。デジタル信号だから内容はわからないが、発信の位置はおおよそ見当がついた。市の東側には、無数の白バイと警官たちが固めていた。箱根越えはとても無理だとわかった。
ジャッカルは富士山を迂回して山梨に出てから南下するルートをとることにした。新潟から南下するのをすでに放棄しているので、警察の警戒は東海道よりも比較的ゆるいはずだった。パーキングエリアで聞き耳を立てると、富士周遊道路にも検問所が設けてあるのがわかった。ジャッカルは道路から外れて山腹を走破した。
店舗がしまる前に富士吉田市に着いた。楽器店でギターケースを買い、リュックをそれに詰めた。つばが肩までたれるようなソンブレロとマントを買った。それらを身にまといサングラスをかけると売れないミュージシャンらしき風采になった。富士吉田駅に警官の姿はなかった。車を駅前駐車場に預けると、富士急大月線に乗った。大月駅では警官とすれ違った。スーパーで食料を買い込んだ。漫画喫茶で一晩過ごし、朝の通勤電車で東京に向かった。阿佐ヶ谷で降りた。警官と機動捜査員がいたが、ジャッカルに関心を示さなかった。ジャッカルはなるべく人通りの多い道を歩いて大岡山までやってきた。
ジャッカルはギターケースをつかみ、立ち上がった。二時になったのだ。

七月十三日、午後三時、東京

袋田は荒れていた。真昼間の区役所通りをゆらゆらと歩いていた。午前十一時半に桜田門を出て、昼飯もろくに食べずに赤坂で二件、ここ新宿で二件、はしごをした。けっこう店は開いているものだった。マンションまで帰り着けるかどうか危ぶまれる足取りだ。江刺は昨日埼玉の実家に帰った。袋田は、酔った勢いでさっき電話してしまった。
「うっせえなあ。たまには私もねえ。ごろごろしながら物思いに耽ることもあるのよ。袋田さんのどじっぷりが伝染しちゃいそうだからさ、ほっといてくれる?」
「生理なのか?」
「とっくに終わってるわよ」
「じゃ、便秘だな」
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦