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ジャッカル21

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マエリアはたちまち夢中になる。男からは、いい匂いが漂ってくる。昨日、集乳車に乗せた時は、牛小屋の臭いがした。牛の汗の臭いがした。今は、かすかな腋臭の匂いとシャンプーの匂いが快く鼻をつく。マエリアの背中側では、テレビがニュースを流している。「……逃走中の容疑者は、金髪で青い目の白人。年齢は三十五六才、身長は185センチぐらい……」マエリアは男の目が光ったのには気がつかない。ぼんやりと、このスティーヴンは、黒い髪で黒い目なのに、体毛が金髪なのはどうしてかしら、と考えた。ま、そういう場合もあるかもしれない。スティーヴンはとても優しい。君はきれいだ、エレガントだ、キュートだと言ってくれる。体中をいたわるようになめてくれる。強く抱いてくれる。
「……日本語が達者で、日本人に変装している可能性もあり……」
テレビ画面にモンタージュ写真が映し出されたが、マエリアには見えない。だが聞こえている。
まさか。
マエリアはかすかに眉をしかめた。ちょっと戸惑い、考えてみる。
そんなはずはない。スティーヴンはいい人だ。私を大切にしてくれる。ずっとここにいてちょうだいと頼むつもりだ。こんなに強く私を抱いてくれる。背中だけでなくて首の後ろも。とっても強く抱きしめてくれる。うれしい。とっても強く……。強すぎるくらいに、痛いくらいに、苦しいくらいに……。ウッグウゥー。

七月十一日、午前十時、東京

重光孝雄は、モニター画面を見ながら腕組みをしていた。警察庁と話し合った上で、活動の主力を民間情報の検索に移してから、丸一日たっていた。国際捜査管理官の田岡信二の、耳うちみたいな電話の声を思い出す。ヤコブ・アレギーノフを探し出しましょうぜ。
重光は部下たちを使って、世界二十数カ国の、過去二十年間に出版された新聞、雑誌、パンフレット、各種名簿等の出版物とウェッブ上に保管されている人物名を百近い民間IT組織を通して検索にかけた。その結果、千百三十六名のヤコブ・アレギーノフが見つかった。片っ端からその経歴を見ていった。すでに死亡している者が五十二名いた。そしてその死亡者の中に不審な者が一名含まれていた。変死者がひとりだけいたのだ。
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦