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ジャッカル21

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マエリア・ルカーサは機嫌がよかった。気分爽快だ。昨日は久しぶりに商売抜きのさわやかなセックスを堪能した。店に来る男たちには三万円でやらせるけど、中には、鏡を見ろよ、このスベタ、とか言って、値切る奴もいる。仕方がない、値切られてもゼロよりましだ。美人じゃないぶん、数をこなさなくてはならなかった。整形をするかどうかは思案のしどころだった。少しでも多く、サンボアンガとマニラに金を送らねばならなかった。年に一回、故郷に帰る飛行機代も惜しいくらいだった。
フィリピンに帰るとすぐに、弟がいるマニラ大学の学生寮に、すっぴんで行く。秋葉原で買った外付けメモリーやアイポッドを土産に持っていく。弟はマエリアの顔を見るとたちまち泣き出す。ぼくが卒業したらいっしょに暮そう、と言う。毎回言う。弟は子供の時から泣き虫だったが、今は、泣く理由が当時と異なることぐらい、マエリアはわかっている。姉さんはへっちゃらだよ、と笑ってあげる。弟はますます泣きじゃくる。こいつ、大丈夫だろうか、と時々心配になる。
娘のキャロラインは、サンボアンガに帰るたびに、成長著しく、こちらは驚きで、うれしいのだが、母親であるマエリアを、少しずつ忘れかけているのが分かる。日本に向けて発つ頃になってようやくなつくのだが。マエリアは空港でいつも泣いてしまう。
こんな羽目になったのは自分のドジのせいだとはわかっている。キャロラインも、女になったらわかってくれるだろう。しかし、許してはくれないだろう。
マエリアは、奥の四畳半で眠っているあの男を起こさないように、そっと、しかし念入りに掃除をしている。汚いところに連れ込んで、恥ずかしいったらありゃしない。部屋に入った時の、呆然と立ちすくんでいる男の様子から、自分の生活のすさみぶりを指摘されたような気がした。金を稼ぐことだけに頭がいっぱいで、自分の住処はイタチの巣のようにしている。こんなふうじゃあいけなかったのだ。レディーでいなくっっちゃ。
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦