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ジャッカル21

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霞ヶ関の警察庁ビルは、日曜なので、さすがに人の動きが少ない。人数そのものが少ないし、人の動きものろい。まったく人の出入りがなくなる一般企業とは異なるが、犯罪も、週末には休みがちとなると見なされている。犯罪が減るのではなく、月曜日まで捜査を保留にするだけだ。実は怠慢である。海外では、犯罪件数はむしろ週末に多くなり、従って、警察関係者には、週末という観念が存在しない。
国内の現場の人間の中にも、コンスタントに忙しい人間はいる。田岡信二も、その一人だ。外国の警察関係者と同じような生活スタイルをとってきた。追うも追われるも、週末は一緒に休むのが暗黙の了解事項だ、などと聞かされるたびに、ふざけやがって、と思う。彼は、犯罪にテト休戦などない、と信じている。だから、日曜なのに出勤して、パソコンの前で首をひねっていても、なんら不自然は感じない。
奇妙な事件ではある。殺害された人間が少なくとも四名いて、同一犯人によるものである疑いが極めて濃い。さらに犯行を重ねかねない凶悪な連続殺人犯が出現したのだ。厳重な警戒網を突破した密入国者であるらしい。充分練られたスケジュールにのっとって、首都を攻撃する可能性がある。外務省が躍起になって犯人の身元割り出しを求めてきている。冷静な重光が、田岡の前で初めて焦りを隠さなかった。田岡は、なにやら不思議な、大きな背景が控えている興味深い舞台のプロローグに立ち会っているかのような感じがして、興奮を抑えられない。
田岡信二は、警察庁長官官房に設置されている国際課組織犯罪対策部国際捜査管理官第一係長だ。国際捜査管理官室は新設なので、いまだに国際部二課といわれることのほうが多い。
外務省と公安委員会から求められることはやってきたつもりだった。ここ二日、満足に寝ていない。もちろん自宅に帰るひまなどなかった。三十八歳にもなると、学生の頃とはさすがに違って、徹夜はしんどかった。部下十四名もほぼ徹夜の毎日が続いていた。若い者たちは、この際手柄をたててやろうと競争していた。
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦