小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ジャッカル21

INDEX|67ページ/141ページ|

次のページ前のページ
 

「関越を使わずに迂回した後、琵琶湖沿岸を下って名神東名を通って東京に行く可能性がある。考えられる最長距離の迂回路だ。琵琶湖東岸から岐阜に入る可能性もある。ショートカットは、高山を過ぎてから中央自動車道に抜ける経路だ。たとえば471号線を辿って、158号線に入り、案房トンネルを抜けて上高地から松本へ行く手がある。わたしはねえ、ジャッカルのやつ、迂回の後は最短路をとるような気がしてるんだ。471号線より北は立山連峰が屏風のようにブロックしている。海岸線は魚津と親不知で検問しているから近づくはずはない。今どこを走っているかわかってるだろうな? 富山岐阜県境の検問をチェックしに行ってるんだ。この道をたどれば高山だ。ジャッカルが走る可能性が最も高い道をわれわれは今走っているんだ」
袋田は隣を見た。江刺は大口をひらいて寝ていた。開け放した窓からは、あたりの森林が発する蒸れた葉とにじむ樹液の匂いが風に乗って入り込んでくる。森の匂いを胸いっぱい吸い込むつもりなのか、江刺は、口だけではなく鼻の穴もカッパと開けていた。
携帯が振動した。警視総監だった。警視庁とは頻繁に連絡を取り合っていたが、総監が直接携帯に電話をかけてくるのはこれが初めてだった。
「江刺は使いものになっているかね」
「総監の姪御さんでしたか。前もって言って下されば、知恵を絞ってお断りの言い訳をひねり出したはずですがね。やりにくくってしょうがないですよ」
「ま、そう言わんでくれよ。見かけほど馬鹿じゃあない。ところで緊急に話し合いたいことがある。ジャッカルの公開捜査に踏み切るつもりだが意見を訊きたい」
「わたしは反対ですね。新潟県警に対しても言いましたが、公開すると、ジャッカルは、口封じのために、自分と関わった人間を殺しかねません。泳がせておいて、調子に乗ったところを逮捕した方がいいでしょう」
総監はたちまち切れた。
「君が公開捜査に反対したからこそ、逃げられたんだろうが! 公開捜査をしていれば、少なくともタクシー運転手の殺害は防げた。そんなこと言ってて、責任取れるのか」
江刺が目を覚ました。
「総監こそ、公開捜査の結果に責任取れますか?」
「当たり前だ。責任とらずに総監をやっとるとでも思ってたのか!」
電話もたちまち切れた。
「叔父さん、怒ってたわね」
「いいんだ、いいんだ。いつものことだ」
今度は警察無線が鳴った。
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦