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ジャッカル21

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ジャッカルは、母親が実は祖母であると知った日のことを思い出す。祖母は、死の床であえぎながら、ジャッカルの秘密のすべてを打ち明けた。驚愕と憤怒と悲嘆にまみれた瞬間……
水平線上に、霞のようなものが広がり、徐々に姿を明瞭にし始めた。重厚なビル群、送電線用の鉄塔、体育館、のろのろ走る二階建てバス。日本海を隔てたロシアの風景だ。ウラジオだ。蜃気楼が現れたのだ。あそこに自分は帰れるだろうか、とジャッカルは一瞬思った。しかし彼は感傷や不安に落ち込む性癖を欠いていた。
水平線から目をそむけるとすぐさま行動を起こした。
ジャッカルは四つんばいで、牧場の柵に沿って左へ移動し、サイロの裏を通って畜舎に入った。畜舎に人はいないのはわかっていた。悪臭と物音のせいで、たとえ乳牛を乳母にして育った人間でも畜舎で寝られはしない。
木の引き戸を開けると、たくさんの視線を感じてぎょっとした。牝牛たちが彼をものめずらしそうに眺めている。ジャッカルは立ち上がって、エイ、と挨拶した。喉が乾いていた。腹もペコペコだった。通路の突き当たりのドアのノブを回してみたが鍵がかかっていた。見回したが搾乳機はなかった。奥から二番目の仕切りの中で、頭を左右に揺さぶっている一番大きな牝牛に目をつけた。餌を入れるバケツを持ってその仕切りの中に入った。レスラーがリングに上がるように、三本の横に張った丸太の、下から二本目と三本目の間をすり抜けた。座り込むとザクロのように腫れあがった乳首を掴んでもみしだいた。500ccほどバケツにたまると飲む。それを五回くりかえした。
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦