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ジャッカル21

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「ジャッカルは、我々がジャッカルが入国したことを知っているということを知っているか? ホームレスの死体が見つかってその犯人が自分だと思われていると思っているか? 微妙なところだ。こちらの知識を見せびらかして、いたずらに相手の警戒心を刺激するのはよくない。それになあ、公開捜査にして、市民を通報者にした場合、市民が危険にさらされる危険性がある。警察学校で教えたはずだ。凶悪犯の場合、通報する可能性のある者をかたっぱしから殺しかねないんだ。人殺しになんのちゅうちょも感じない人間が、犯行を強行しようとすると、さぞや死人がたくさん出るだろうな」
天木は聞きながら身震いをしている。袋田は語り続けた。
「公開捜査はもうちょっと待とう。ところで、新潟から東京に向かう自動車道路は、何本ぐらいあるのかね」
「あぜ道だって車ぐらいは通りますからね。関越自動車道を筆頭にして、二車線以上でも七〇本ほどはあります。関越はどうしますか? 通行を遮断しましょうか?」
「いや、そんなことはするな。遮断したら、あぜ道に逃げるじゃないか。それよりはむしろ関越に乗ってくれたほうがいいんだ。関越に乗せておいて前後で挟めれば、こんな楽なことはない。とにかく、関越道以下七十本すべてを徹底検問するんだ。できれば、あぜ道もな」
その日の午後いっぱい、袋田と江刺は、暑い中を検問所まわりで過ごした。関越道の各インターは大渋滞をきたし、県の南部全体にその渋滞が伝染した。警察への抗議電話で交換はパンクしそうになった。マスコミは不審の念を露骨に表明し、詳しい説明を求めてきた。しかし宵闇迫る頃になっても新たな情報は得られなかった。ジャッカルは消えてしまった。

午前三時。江刺の携帯が鳴った。寝ぼけ眼で受話器を耳に当てた。「もしもし、邦子ちゃん。起こしてごめんなさいね。わたし、生活安全課の安西恵美です」と、ささやき声が聞こえた。安西は前日昼間に仲良しになった二十三歳の女性警察官だった。レズ傾向が明らかな子だった。
「こんな時間まで大変ね。夜勤とは知らなかったわ.ひどい話よね。バテバテでしょ? それで、どうかしたの?」
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦