ジャッカル21
武器を持った男二人を含めて三人を殴り殺してますが、こんな現場は見たことないですな。犯人は空手かボクシングの使い手のようですね。打撃だけでは人はなかなか死なんですよ。倒れたときの頭の打ち所が悪い場合ってのがよくある例ですな。内臓破裂で死ぬことはありますが即死はしません。おそらく犯人はよほどの怪力の持ち主です。被害者たちは、電車に真正面から衝突したような衝撃を受けたことでしょう」
一座のざわめきの中で、誰が言い出したかはわからないが、ジャッカルだ、ジャカルの仕業だ、というひそひそ声が波紋のように広がった。
そのジャッカルの動きは速かった。さらに続けて、警電は次のように伝えてきた。
「聞き込みから、転送されてきた写真の男に似た者を、何人かの人間が目撃したという情報が入りました。当人とつなぎます」
全員がしんとなって聞き耳を立てる。
「捜査第一課三班、車屋研三巡査部長が報告いたします。十一時二〇分ごろ、新潟大丸デパートで、捜索中の男らしい人物が買い物をしました。右上腕にカッターナイフで切られたような傷があったそうです。買ったものは、ジーパン二本、白のTシャツ三着、ジャージ上下、いずれもエックスエルの大きさ。黒のカラーヘアークリーム二箱、黒のカラーコンタクト二組、バスケットシューズ、トレッキングシューズ各一足ずつ、大きさはともに29センチ。目撃した女性三名はいずれも販売職員です。以上」
聞き終えた天木は顔面を蒼白にして袋田を見た。
「こっちが後手にまわってますね。公開捜査にしましょうか。人を殺してますし」
「うーん、そこは考えどころだな」
袋田は眉に皺を寄せて答えた。袋田は公開捜査に反対だった。結局公開捜査に踏み切らざるを得なくなるとしても、なるべくならその時期を遅らせたかった。