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ジャッカル21

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その男は、焚き火の向こうで立ち止まった。平良を見下ろしてから、辺りを見回す。やはり外人のようだ。おもむろに坐りこむ。立てひざに肘をかけて平良に向かって語りかけた。
「銀行カードが三枚」
平良はあわてて、預かっていた封筒の封を切った。手探りでカードらしきものをつかみ出した。焚き火越しに手渡した。手渡しながら、さあ勝負だ、と自分に活を入れた。
「免許証、三通」
平良は免許証を取り出した。いずれもバイヤーに預けておいた自分の写真が貼り付けてある。名前はそれぞれ違う。精巧な偽造免許証だった。二通は普通免許、一通は大型免許だった。それらをトランプのカードを持つようにひろげた。渡さない。
「住民票、一通」
それもつかみ出したが渡さない。相手は不審げな表情で平良を見た。平良もその相手の顔を落ち着いてよく見てみた。仰天した。鏡を見ているようだった。世の中にはよく似た人間がいるものだと感心した。落ち着きを取り戻してから、平良はおもむろに提案した。
「あんたに折り入って話があってさ。なあ、銀行カード三枚とは豪勢だな。全部とは言わないからよお。一枚分だけわけてくれねえか。ここで待ってるからさあ。免許証と住民票は、おろした金と引き換えだ。あんた、相当やばい橋を渡ってるみたいだよな。金がかかってるもんな。俺がほしい金額なんてわずかなもんさな」
その男の背後から足音が聞こえてきた。草むらの中から、男が二人出て来て、相手の左右に立って身構えた。ひとりはカッターナイフ、もうひとりは鉄パイプを構えている。
「俺のダチだよ。銀行までついていってやるだと」
男はかすかに笑った。平良はその男が宙に浮いたのを見た。その男は焚き火を跳び越えて、書類をつかんでいる平良の両手を握り締めた。その握力は平良の手首を破砕しそうなほど強かった。

七月九日、午前十一時四十五分、新潟
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦