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ジャッカル21

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「……沼垂派出所より変死事件発生の報告あり。死亡者は漁協職員橋本直次郎二十四歳。活魚運搬用のトラックの水槽で溺死していました。第一発見者は、やはり漁協職員である大下康司。死亡者の中学時代からの友人であるとのことです」
袋田は机の上のマイクを引っつかんで叫んだ。
「水槽に魚はいたのか」
言った直後に、突拍子もない質問だったと反省する。
「はあ? ちょっとお待ちください。……はっ、はい。鰯が二三匹跳ねてたそうで」
「分配した後っていうことか。魚市場の水槽から直接分配しなかったのはなぜだ。わざわざトラックの水槽に入れる必要はないだろうに」
「トラックは東港から来ましたから」
袋田の頭に血が上った。
「東港に着いたどの船から鰯を下ろしたんだ」
「ロシア船籍のトロール船らしいです。名前はえーと、なんだっけ」
袋田は、興奮のあまりテーブルをたたいて立ち上がった。しまったーっ、と叫んだ。天木と近くに坐っている数人の者が袋田の顔をまじまじと見上げた。袋田の脳裏に朝の東港の情景がよみがえった。ピョートル二世号の上甲板、船長の真っ赤な顔、鰯が雲をなすようにして泳いでいた水槽、海水を滴らせて頭上を過ぎていく網、万歳をしているように天井をあけている活魚トラック。袋田はいつのまにか両手を力いっぱい握り締めていた。
やっぱりジャッカルは新潟にやってきた。ジャッカルはまんまと上陸に成功した。しかも人を殺した。さっそく殺してしまった。
天木が袋田の脇に立ち、震える声でたずねてきた。
「あいつの仕業ですか?」
「ああ。まずまちがいないな」
袋田はくずおれるように着席した。
天木は顔色を変え、署員たちに向かって大声でわめいた
「新潟市内は直ちに厳重警戒態勢をとる。市部全域にわたって交通規制。平均検問間隔二キロメートル。いくら渋滞してもかまわん!
固定と携帯の電話の外国との送受信記録を六時間前のから提出させろ。受け手は、総務部、警務部、交通部。市内に設置されたすべての監視カメラの映像は事件現場に近い順にプロジェクターで映せ。同時に専任のモニターヴューワーをつけて詳しく点検。職質徹底。増員手配の連絡。特に直江津と柏に強く要請しろ。市警の非番のやつには緊急動員をかけろ。タクシー、トラック等の無線機搭載車に対して現況報告義務が発生した。応答のないものに対しては即刻追尾!」
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦