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ジャッカル21

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「われわれが目指すことは、ひとりの密入国者の拘束です。ただそれだけです。なぜ私がここに皆さんに面と向かって坐っているか、なぜ昨日から今日の午前にかけて港にへばりついてきたか、皆さんをお騒がせしたか。理由は、その者をできるだけすみやかに拘束したいからであります。拘束すべき人物がきわめて危険だからです。東京都心での大胆な犯罪を予告しています。都心に近づけてはならないと、警視庁も警察庁も判断しています。予期される犯行はきわめて計画的でかつ大掛かりなものと思われます。大掛かりといっても、あくまで背後関係についてだけ可能性を否定できないということでして、現実の犯行は単独行動でなされると思われます。密入国の事実さえ確認できない段階で、実質的な特捜を設置することになるとは、皆さんのご不審の念もしごく当然のことと思いますが、ことの重大性を御考慮いただき、お許し願いたいと存じます」
袋田は深々と頭を下げた。
「やつはテロリストでしょう。袋田先生は、はっきりおっしゃいませんが。皆さんはそう心得ていてかまわんと思いますよ。テロリストのコードネームはジャッカルです。ターゲットは、今の話を聴いてて、皆さん、分かっちまったと思う。首相です」
座がどよめいた。袋田は、あーっ、と小声ながらも唸った。天木が発言したのだった。袋田はそのとぼけた横顔を睨みつけた。袋田の用心深いが曖昧模糊とした言い方と自分のざっくばらんだが情報量の多い語りかけとを、部下たちに対照的に印象付けようと意図したふしが見えた。袋田は、知ったかぶりめが、俺の許可なく余計なことを言いやがって、と思いながら相手に聞こえないように舌打ちをした。総監は、特に新潟県警には強い協力を呼びかけたことだろう。天木は、よほどのことが起きたに違いない、出世のチャンスだ、と喜んだはずだ。詳しいことが分からないと、こちらとしてもとっさの対応ができませんから、などと言って粘りまくり、総監の口を割らせた疑いがある……
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦