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ジャッカル21

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「東京と富山と、あと夏場だけ新潟だ。どれもウラジオストック発だ。それから、稚内と小樽が、サハリンとフェリーでつながっている。サハリンのコルサコフやホルムスクはウラジオから随分と遠い」
暗唱するように答える総監を見て、総監がすでに同じ意見を持っていたと、袋田は半分信じた。秘書の郡司は、パソコンの前でマウスを動かし始めた。
「富山・ウラジオストック、新潟・ウラジオストック間の航路の時刻表が必要です」
言い終わるとすぐに郡司がプリンタを動かし始めた。彼はプリントアウトした時刻表を袋田の前に置いた。
豪華客船ミハイル・ショーロホフ号は、すでに二日前に富山の高岡港内の伏木埠頭に入港済みで、金曜日に同港を出て、一日半かけて日曜日にウラジオに着くことになっていた。新潟に今週末の客船の入港予定はなかった。
「外国船が一番たくさん寄港する裏日本の港はやはり……」
「圧倒的に新潟港だな」
「では、とりあえずは新潟に行きましょう」
総監はにやりと笑った。自分の予想が当たったとでも思っているようだった。
その後、細かな事務的打ち合わせに三十分ほど費やした。袋田が挨拶をして部屋を出ようとすると、総監が背後から声をかけた。
「十階に寄って出向費を前払いで受け取れ。特に期待はしていない。好きなようにやれ。気をつけろよ」
「はっ」
袋田は振り返らずに頭を下げるとドアを閉めた。

袋田は八日の昼過ぎに新潟に着くと、県警と市警に挨拶に行き、その足で東西二つの港湾事務所を訪れ、週末に入港するすべての船の寄港地履歴を調べた。ロシア発またはロシア経由の船が八日午後に二隻、九日午前に一隻あった。十日は日曜のせいもあって、入港する船はなかった。八日夜に、西港に着いたのは、五百トンほどのロシア船籍の蟹工船だった。  
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦