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ジャッカル21

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東京は厳戒態勢ですし、首相周辺は、何重にもガードが固めてあって近寄れません。人や柵を蹴散らして自爆テロを敢行するのなら話は別ですが、それはないと思います。爆弾の材料を日本国内で買うなり盗むなりしている暇はないし、そんなことをしていたら足が付きかねないでしょう。敵は、ターゲットを首相一人と限定しています。首相だけを抹殺しようとしている。周辺のものたち、市民は眼中にない。自爆テロは無差別に多数を殺傷しますから、ジャッカルはやりません。自爆テロは、若くて血気盛んなトウシロウがやることです。経験を積んだ単独犯が、短期決戦で犯行に及ぶ際にとる道ではありません。首相ひとりだけをピックアップして襲撃するには、あいもかわらずですが、遠くから狙い撃ちするしかないのです。高度の熟練を要する行為です。実戦経験を積んだ元軍人なら一応どんな武器でも使いこなせますが、このような精密な仕事をする場合は、使い慣れた、あるいは自己流に改造を重ねた武器しか使いません。そのような武器を国内で見つけられるはずはありません。愛用の武器を持ち込まざるを得ないのです。そうすると、空港の厳しいチェックを通過できるわけがない。現在の厳重なテロ対策のもとでは、かみそり一枚でも見とがめられますからね。したがってジャッカルは海路をとるはずです。港湾のチェックは空港ほど厳しくはありません。チャーター船で密航してくる可能性もありますが、巡視船も厳戒態勢をとっているはずですし、一般船舶、漁船等にも監視と報告の義務勧告が出ているでしょうから、かえって見つかりやすいでしょう。北朝鮮や中国からの密入国船の拿捕率が近年大いに高くなったのは敵だって知っているはずです。だから、たぶん、外国航路の客船にまぎれこんで来るか、貨物船や漁船の乗組員に化けて来るか、そんなところに落ち着きますね。結局、私の出向くべきところは港であることが分かります」
「おいおい、ジャッカルから直に訊いてきたような口ぶりだなあ。しかし、その勘が、今まで、大体あたってきたんだからしょうがないがねぇ。ところで、実は僕も同じ意見なんだと言っても信じてくれんだろうな」
袋田はもちろん信じない。
「ロシアから日本への定期船はどこに着きますか?」
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦