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ジャッカル21

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「東洋人との混血の可能性もあると書いてありますが、もしかして、日本人との混血ではないでしょうか?」
袋田は、根拠のないことを口にしたことを恥じた。しかし総監は面白がった。
「なるほど。ありうるな。ロシア在住の日露混血者はそんなに多くないはずだな。だめでもともとだ。調べさせよう。ロシアの退役軍人名簿も、何とか手に入れたいがね。そういうことはこちらでやる。君にやってもらいたいのは、ジャッカルを見つけ出すことだ。首相はG7が終わるまで東京を離れない。だからジャッカルは東京に来る。首都圏は、厳戒態勢を敷きつつある。とても手がたらん。しかし敵が来るのを待っていては仕方ない。ゾーンディフェンスと同時にマンツーマンディフェンスもとる。警視庁としては、仕掛けてもいきたいんだ」
「分かりました。どこへでも行きますよ。ところで私のような役割の出向組はどれくらいの勢力になりますか? 四、五十人ほどにもなりますかな?」
総監は、デスクの上に肘をつくと、両手に顎をのせていたずらっぽく袋田を見てウインクした。今まで総監にウインクなどされたことなどなかったので、袋田はびっくりした。
「君ひとりだ。手が足りないんだよ。それに、ひとりだろうと千人だろうと、あまり差がないような気がしてね。基本的なことは県警で出来る。変わったことをするのは君しかいない。おっと忘れていた。あとひとり、信頼のおける者を助手につけてやる」
袋田は、総監の信任が厚いことには自信があったが、こんな、ダメもとじみた扱いは、急に当てにされなくなったような感じがして不服だった。しかしそれは思い違いだとすぐに反省した。袋田一人だけを選び出したことがその逆を示しているように思えた。今回のような前例のない出来事に悩んだ末、袋田を呼び出してミッションを与えたのだという感じがしてきた。袋田を外に出すのは、総監個人の窮余の思いつきであり賭けであるな、と見当がついた。刺客かお庭番にでも任命された気分だった。名誉と思わねば、と観念した。
気の迷いがなくなった。余裕ができ、軽口さえたたいた。
「信頼されているのか馬鹿にされているのか分かりませんね。東京に置いておくと邪魔されるとでもお思いなんでしょ?」
「はっはっは。さすが、察しがいいね」
袋田が辞退しないと確認できて安心したのか、総監の顔には自然な笑みが広がった。
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦