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ジャッカル21

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妻と三人の子供たちは、郊外の建売住宅に暮らしていた。長男はすでにサラリーマンになっており、次男と娘は大学生だ。二人ともバイトに明け暮れる毎日のようだ。バイトで稼いだ金は遊び代に消える。家の現状なぞ考えていない。親の離婚にむかついて腹いせのように遊んでいる。元妻は働く気がなく、酒ばかり飲んでいる。平サラリーマンの長男の収入では、生活費以外に住宅ローンと二人分の学費を払っていくことはできなかった。長男は、気が弱い優しい子で、家族に意見などできない。袋田は毎月十二万円の仕送りをしていた。ちっとも気など弱くはないが、やはり意見はしない。
袋田は九時に庁舎十一階の総監室に入った。六階にある自分のデスクには立ち寄らなかった。
総監はいかにもくたびれたようすだった。目が血走っていた。袋田をソファに坐らせた後、いすから立ち上がって腕を後ろに組みながら室内を行ったりきたりし始めた。袋田より十歳年長ではあるが、背中が曲がり、喉の周りが皺だらけだった。特に今朝の憔悴振りは今まで見たことがないものだった。一挙に老人になったかのようだった。
やがて総監は話の段取りを確認したかのように立ち止まって背を伸ばすと、顔を袋田に向けて話し始めた。
「いやねえ、奇妙なことが起きちまったんだよ。とにかく首都圏の厳戒態勢をとらにゃあならんことになった。八月にあるG7を口実にするから、都民はさほど驚かんだろうがね。全国の県警本部の協力を仰ぐべく警視庁声明はすでに出してある。全く天から降ってきた災難だよ。敵の姿が全く見えない。ホラ話や誤報の可能性が大いにある。しかし、裏のとりようがない。もしほんとうの話なら危機はもうすぐそばまで迫っているんだ。こんなことを言ったって何のことやらわからんだろうね」
総監はデスクに戻ると書類をとって袋田に手渡した。
「外務省の国際情報官室からのものだ。同じものが国家公安委員会、警察庁に回っている。外務大臣、次官、次官補もすでに読んでいるはずだ。
作品名:ジャッカル21 作家名:安西光彦