ジャッカル21
新潟東港は、防波堤の内側に一様に十五メートルの深さで掘削してできた掘り込み港だ。大きな十字型にひろがっている。十字の枝に当たる4本の航路の幅は350メートルで、十字の真ん中はやや膨れていて直径500メートルの円をなしている。今、防波堤の付け根に並ぶ埠頭を目指して、黒塗りの船が入ってきた。これらの埠頭と、その対岸にある斜めに突き出た大型埠頭は、24時間フルに働いていた。インドネシアからのLPGを一手に引き受けている。埠頭に隣接して、タンクと煙突と工場と火力発電所が、いずれも鈍く銀色に光っていた。十字形の中央広場の右下のコンテナヤードに、一隻の貨物船が停泊している。一万トンほどの中国籍の大型船である。夜が明けたばかりで、雨も降っているので、突き出た船首や膨れた船腹の下のほうには、夜の名残が薄暗い翳となってとどまっていた。しかし荷揚げ作業は始まっていた。
埠頭に並ぶ赤く塗られたガントリークレーンが、蟹の腕のようにコンテナを掴みあげていく。クレーンはこの埠頭には四基ある。そのうちの一基が稼動していた。次々と埠頭に入ってくる大型トラックに、コンテナを積んでいく。クレーンの脚を中央分離帯として、バックで入ってきたトラックは、埠頭の突端で車線を変え、船のそばに擦り寄って来て止まる。荷台の前方に二個のコンテナを積むとじわりと前進して停まる。後部にまた二個のコンテナを積むと後ろに控えたトラックに場所を空ける。クレーンがきしる音とトラックのエンジンの音があまりに姦しいので、作業員や運転手のがなり声は聞こえない。作業員の数は意外に少ない。船上に四、五人ほど、トラックの荷台に乗ってクレーンから垂れているロープを操りながらコンテナの位置を決めるのに三人。見えないところで作業している者たちが幾人もいるのだろう。